ただ、トゥヘル前監督があくまでも速い攻撃を重宝したため、香川が絶対的な存在になることはなかった。「オバメヤン、ロイス、デンベレの3人はやっぱり、このチームの一番の強みなんでね、そういう意味では現状を受け入れているというか……。でも受け入れている自分がダメなのかなとも思いながら……」。昨季終盤、香川は複雑な心境を吐露した。

 それでも香川は折れなかった。

「現状を受け入れないといけないところもありますが、こればかりは受け入れ続けてはいけないと思っています。この状況を覆すには、強い意志と信念が必要になってくる」

 監督が代わるか、監督の考えが変わらない限り、香川の立ち位置が変わることはなかっただろう。来夏で契約が切れる状況だったこともあり、移籍の可能性も十分にあった。しかし、シーズンオフにピーター・ボス新監督が就任したことで状況は大きく変わった。ポジション争いは白紙になり、チームは新たに生まれ変わる。香川はドルトムントとの契約を2020年まで更新し、ロシアワールドカップに向けた重要な1年をドルトムントで過ごすことに決めた。

「もうこのチームで長いですし、ピッチに入ったら自分自身がやるという気持ちがなきゃいけない歳なので」

 ドルトムント在籍も通算6シーズン目となり、28歳になった香川には自分をチームでどう活かすかというだけではなく「自分がチームの中心に」という決意がある。”チームの中でどう活きるか?”から、”チームをどう活かすか?”への意識改革。この強烈な意識がどんな変化と成長をもたらすのか。今シーズンの香川に注目したい。(文・山口裕平)