族議員たちも、「〇〇先生は困った人だよねえ。なんかわけのわからないことばかり言うからねえ。誰も相手にしてないよ」などと、理屈で批判するのではなく、個人攻撃で貶めるようなことを言う。

 そういう評判を立てられると、多くの議員は、党内での出世が危なくなること、さらには、村八分にされることを怖れて、大勢になびいて行くようになってしまう。それが官僚の狙いでもある。

●大臣が答弁を棒読みする4つのメリット

 役人が作った答弁を棒読みするのは、決して格好の良いものではない。特にテレビに映るような場では、どんな政治家でもそういう無様なことは避けたいと思うものだ。

 それでも、多くの大臣が答弁を棒読みする姿を目にするのはなぜだろうか。その理由は、答弁棒読みにはいくつかの大きな効用、メリットがあるからだ。

 まず第1のメリットは、時間の節約。大臣はまじめにやると非常に忙しい仕事だ。国会中は、朝早く起きて新聞に目を通し、国会審議が始まる前に答弁の勉強をしなければならない。国会審議の合間を縫って、あるいは、国会審議後に通常の業務の説明を受けたり決裁したり、外部の関係者や他国の閣僚などとの会談などもこなす必要がある。
 つまり、どんな大臣でも、全ての国会答弁を一から勉強して内容を理解して自分の言葉で答弁するのは非常に難しいのが現実だ。その場合、役人が作ってくれた答弁をそのまま読むのが最も時間の節約になる。その分睡眠時間も十分に取れて、特に高齢で体力に心配のある大臣にとっては、非常に助かるというメリットがある。

 第2のメリットは、リスクの最小化だ。役人の答弁は、非常に細かいところまで注意が行き届いていて、間違いがほとんどない。説明しにくいことを角が立たないように言葉を選んで作成してある。もし、これを少しでも言い換えようとすると、細かいニュアンスなどで問題が生じることがあるだけでなく、一つ間違えば、国会で立ち往生することにもなりかねない。特に、予算委員会では、自分の答弁で問題が起きて審議が止まれば、他の大臣にも迷惑が掛かるし、予算の成立時期が遅れることになれば国会審議全体に大きな混乱を招き、さらには政権の存続に影響を与えることさえある。そういうリスクを極力避けようと思えば、自分の言葉で語るより、答弁を棒読みしておいた方が安心だということになるのだ。

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