いずれにしても、お墓は自分だけではなく、今後管理してくれる子や孫の世代に大きく関わってくる問題です。自分の意見だけでなく、子どもたちの意向を十分聞いて進めないと、後々トラブルになりかねません。「自分が2割、子どもが8割」くらいのつもりで、意見を調整したほうがスムーズです。

 以前は「先祖代々のお墓を引き継いで守っていく」「夫婦は同じお墓に入る」などと考える人も多かったのですが、ライフスタイルや価値観の多様化などにより、お墓に対する意識も徐々に変化してきました。独身の人や子どものいない家庭も増えているので、お墓の継承者はますます少なくなっていくことが予測されています。

 現実的にこれまで通りの方法では対応できなくなっており、「家の墓」から「個人の墓」へと考え方が大きくシフトしています。

 お墓を先祖と切り離し、夫婦や家族の単位で考えて、新たにお墓を建てる方法をとる人もいます。一人っ子同士の夫婦が両家のお墓を一緒にする「両家墓」といったスタイルも出現しています。

 また、継承者がいなくても寺院が長期にわたり供養してくれる「永代供養墓」や、交通の便がよく、気軽に行ける「納骨堂」などが、都会を中心に増え、広く関心を集めています。

 最近は、血縁関係のない人同士が同じお墓に入る「合葬墓」という形態もあります。さらには、子どもたちに面倒をかけないための方策として、遺骨を自然に返す「散骨」「樹木葬」といった「自然葬」も注目されています。

●日本葬祭アカデミー教務研究室代表・葬祭カウンセラー
二村祐輔(ふたむら・ゆうすけ)
葬儀コンサルティング、講演活動などを展開。テレビでも活躍。葬儀社に約18年間勤務し、2000件以上の葬儀にかかわる。『60歳からのエンディングノート入門 わたしの葬儀・法要・相続』(東京堂出版)など著書多数

※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より