イングランドの”貴公子”ベッカムもFKの名手(写真:getty Images)
イングランドの”貴公子”ベッカムもFKの名手(写真:getty Images)

 「FKの名手」と聞かれてまっさきに浮かぶのはジュニーニョ・ペルナンブカーノだ。フランス・リーグアン連覇を成し遂げたリヨンの中盤を支えたブラジル人MFは、正確なパスと右足のミドルシュートで抜群の存在感を見せたが、何より直接FKのシーンは彼の独壇場だった。

 多彩な軌道のボールを蹴るジュニーニョは無回転FKを世界に流行らせた元祖とも言うべき選手で、そのキレと精度は他の追随を許さない。一流のGKが構える状態で、ゴールまで30メートル以上の距離から何本も決められる選手はジュニーニョをおいて他にいないだろう。

 ジュニーニョの他に、すでに引退した選手の中ではデービッド・ベッカムの名前を挙げないわけにはいかない。右足クロスの名手でもあるベッカムはインステップの振りでインサイドに当てる正確無比なキックで相手が築く壁のギリギリ頭上を越えてゴール隅を狙うことができた。ベッカムが決めた歴史的FKとして多くのファンの目に焼き付いているのが2001年10月6日に行われた日韓ワールドカップ予選のギリシャ戦で決めたゴールだろう。多大なプレッシャーを背負う中で後半アディショナルタイムに25メートルの距離からGKが動けない軌道のFKを決め、母国・イングランドを奇跡的な本大会出場に導いた。

 現在、米国のMLSで現役を続けるアンドレア・ピルロも大一番のFKゴールが記憶に新しい。ジュニーニョを参考に開発したとも言われるFKはビッグゲームの勝負が懸かったシーンほどに脅威を増した。ピルロは常に冷静な上に、FKの位置や壁の状況、GKのポジショニングを見極める観察眼に優れている。ちなみにピルロが決めたMLSでの公式戦初ゴールもFKだった。

 左利きの代表的なフリーキッカーと言えば「悪魔の左足」ことロベルト・カルロスが思い浮かぶが、シニシャ・ミハイロビッチの左足も圧巻だった。「偉大なる左足」とも評されたキックは威力、曲がり、精度ともに見事で、イタリア・セリエAの98-99シーズンにFKのみで記録したハットトリックはサッカー界の伝説となっている。

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