また、ペトロヴィッチ前監督の指揮下では年に数回だったセットプレーのトレーニングも、堀監督のもとでは非公開練習の中で準備している模様だ。守備時にマークを持たないストーンを2枚置くのは変わらないが、クラブ幹部が「1週間で試合に行って、いきなり凄いボールが来るような状態だったのかもしれない」と話したように、慣れと訓練という部分は重要な要素だ。実際、その数回のセットプレーのトレーニングを主導していたのも前監督ではなく、当時、コーチを務めていた堀監督だっただけに、今後も引き出しを増やしていくことも可能だろう。浦和に欠けていた部分は、こうやって少しずつ埋まりつつはある。

 そのうえで、大宮戦、甲府戦とともに、リードをした状態で迎えた試合終盤の戦い方には、改善の余地があるはずだ。何しろ、浦和はリーグ戦38失点のうち、後半16分以降に20失点をしている。結局、大宮戦に同点ゴールを喫したのも後半43分であり、甲府戦も残り15分ほどはかなり相手にボールとゲームを支配された。

 堀監督も大宮戦後に「最後にパワーをもたれたところで、そこを守り切れなかった。そこは自分のアイデアを出して、それをはね返すやり方があったと思います」と話しているように、今後のゲームに選手交代やシフトチェンジなどによってより安定感のあるゲーム運びをする必要性を感じているようだ。より敵陣でボールをキープして時間を使うことや、ボールの運び方で相手を一度自陣に下げさせるようなことも必要になってくるだろう。

 もちろん、ペトロヴィッチ前監督の作り上げてきたチームの土台がしっかりしているからこそ、大掛かりな変更をせずに修正を掛けられているのは事実だ。そうした中で、内容で完全に上回って勝利するというロマン派の指揮官から、もう少し現実的な方向へと舵は切られている。ペトロヴィッチ時代のワクワク感は薄れるかもしれないが、より結果にフォーカスした方向に向かう浦和は、急ピッチで立て直しを図っている。(文・轡田哲朗)