月探査の大きな目的は、月のなぞを解くことだ。これまでの探査でどんななぞが解かれ、どんななぞがまだ残されているのか。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、大阪大学准教授・佐伯和人さん監修の解説を紹介しよう。

佐伯和人先生/大阪大学理学研究科准教授。JAXA月周回衛星「かぐや」プロジェクトの共同研究員を務め、小型月着陸実証機「SLIM」などにも参加。著書に『月はぼくらの宇宙港』、『世界はなぜ月をめざすのか』など。(撮影/熊谷武二)
佐伯和人先生/大阪大学理学研究科准教授。JAXA月周回衛星「かぐや」プロジェクトの共同研究員を務め、小型月着陸実証機「SLIM」などにも参加。著書に『月はぼくらの宇宙港』、『世界はなぜ月をめざすのか』など。(撮影/熊谷武二)

■「かぐや」がなぞ解きに貢献!

 アポロ計画では、月の石をたくさん地球に持ち帰った。この石を分析して、月が生まれたばかりのころ、マグマの海があったと思われることなどがわかったんだ。さらに、日本の月周回衛星「かぐや」(SELENE)などが月の上空から観測し、月の表と裏が大きくちがうこと、大きな縦孔があることなどもわかったよ。

 一方で、新たななぞも生まれた。月の表と裏はなぜちがうのか。大きな縦孔の中はどうなっているのか。また、月がどのようにできたのかという昔からある大きななぞも残されたままだ。

 こうしたなぞを解くためにJAXAが挑戦するのが、小型月着陸実証機「SLIM」の計画だ。目的は、月面のねらった場所に正確に着陸すること。これまでの技術では、目的地からはるか遠くに離れて着陸してもしかたなかった。それがねらった場所に降りられれば、さまざまな探査が可能になる。中国が世界初の月の裏側への着陸を目指すなど、月のなぞを解くために、世界各国がチャレンジしているよ。

【なぞ1】 過去の月探査でわかったなぞ

<「月の石」でわかった!>

●月は昔、高温どろどろのマグマだった!
 月から持ち帰ってきた石を調べたところ、「月の高地」と言われる白っぽい部分には「斜長岩」が、「月の海」と言われる黒っぽい部分には「玄武岩」が多く見られることがわかった。どちらも、高温でどろどろにとけたマグマが固まってできる石だ。そこから、月はできたてのときはマグマの海に覆われていて、長い年月の間にさまざまな変化を起こし、冷えて固まったという説が生まれた。

【キーワード:月の石】
アメリカの「アポロ計画」では合計382キロの月の石が持ち帰られた。当時のソ連の無人探査機「ルナ」も、合計321グラムの石を持ち帰っている。

<月周回衛星「かぐや」で上空から観測してわかった!>

●巨大な縦孔がある!
「かぐや」は、月に直径100メートルほどの大きな縦孔が三つあることを世界で初めて発見した。しかも、下にだけでなく横にも広がり、地下室のような空間になっているようにも見え、マグマが固まるときにできたトンネルではないかと考えられている。

●表と裏でちがいがある!
「かぐや」は、上空から月を表も裏もくまなく観測し、月の地殻をつくる成分を明らかにした。すると、表も裏も斜長岩だが、表はマグネシウムという物質が少なく、裏は多いというちがいがわかった。

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AERA dot.編集部
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