月は、地球にいちばん近くて、身近な天体だ。今、その月に、世界各国が競って行こうとしているって知っているだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、大阪大学准教授・佐伯和人さん監修の解説を紹介しよう。

佐伯和人先生/大阪大学理学研究科准教授。JAXA月周回衛星「かぐや」プロジェクトの共同研究員を務め、小型月着陸実証機「SLIM」などにも参加。著書に『月はぼくらの宇宙港』、『世界はなぜ月をめざすのか』など。(撮影/熊谷武二)
佐伯和人先生/大阪大学理学研究科准教授。JAXA月周回衛星「かぐや」プロジェクトの共同研究員を務め、小型月着陸実証機「SLIM」などにも参加。著書に『月はぼくらの宇宙港』、『世界はなぜ月をめざすのか』など。(撮影/熊谷武二)

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 これまで月面に降り立った人類は何人いると思う? 正解は12人。彼らは皆、アポロ計画で1969年から72年までに月に着陸した宇宙飛行士なんだ。ということは、以来、人類は45年以上も月面に降り立っていないことになる。

 ところが最近、世界各国がこぞって、月探査に力を入れている。なかでもめざましいのが中国だ。2013年には無人探査機を月面に着陸させることに成功した。アメリカ、ソ連(現在のロシアなど)に次いで世界で3カ国目の快挙だ。日本は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が07年に打ち上げた月周回衛星「かぐや」が大きな成果を上げ、19年には、小型月着陸実証機「SLIM」を送る予定だ。2030年ごろには、日本人の月面探査も計画している。

 国だけではなく、民間企業も月に注目している。IT企業のグーグルが出資して、世界初の国際月面探査レースが開催される。日本からもチーム「HAKUTO」が参加するんだ。

■安く手軽に月に行ける時代に

 アポロ計画から約半世紀後の今、月探査ブームが再来した理由の一つは、技術の進歩だ。アポロ計画は、アメリカとソ連が激しく争う、冷戦と呼ばれた時代に行われた。ソ連に人工衛星の打ち上げで先を越されたアメリカが、人類初の月面着陸は負けられないと、とてつもないお金や技術を投入して実現したんだ。

 逆にいえば、それくらいのお金や技術をかけなければ、月探査はできなかった。だから、冷戦の時代が終わると、月探査もあまり行われなくなってしまった。ところが、最近、宇宙開発技術が進歩して、以前よりはるかに安く、手間もかからずに月へ行けるようになった。そこでまた、月探査ブームが到来したんだ。

 月は、地球から最も近い、身近な天体だけど、まだなぞは多い。月探査が進めば、なぞが解明され、科学の扉を新しく開くことが期待される。将来、月に人類が住むことも夢じゃないよ。

【キーワード:アポロ計画】
NASA(アメリカ航空宇宙局)の月への有人宇宙飛行計画。1961年5月に始まり、69年7月20日にアポロ11号が月面への軟着陸に成功。人類が初めて月に降り立った。72年の17号までに計12人が月面へ着陸した。月旅行という人類の夢を実現し、月の石を持ち帰り、月の構造や月の年齢の解明など、人類の月に対する知識の向上に貢献した。

<世界初の国際月面探査レースに日本チーム「HAKUTO」参戦!>
インターネット検索などでおなじみのアメリカのIT企業「グーグル」が出資して、世界初の国際月面探査レース「グーグル・ルナー・エックスプライズ」が開催される。「月面に探査ロボットを着陸させる」「そこから500メートル走行」「撮影した動画や静止画像データを地球に送信」というミッションをどのチームがいちばん早く達成できるかを競うもので、賞金総額は3千万ドル(約33億円)。日本からは、宇宙開発ベンチャー「アイスペース」や東北大学らでつくるチーム「HAKUTO」が参加。インドのロケットで今年末に月に向かい、優勝を目指す。

(監修/大阪大学准教授・佐伯和人)

※月刊ジュニアエラ 2017年8月号より

ジュニアエラ 2017年 08 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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