まず、世界は「六道」という6種でできているとし(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)、この最下層が「地獄」であると源信は説いた。

 人は死ぬと三途の川を渡り、地獄の十王の裁きを7日ごとに7回受ける。閻魔大王ばかりが有名だが、地獄には全部で10人の王がいて49日までに7人の王の裁定が下され、ここまでで結審しないと残り3人の王による、100日目と1年後、2年後の裁きとなる。人が亡くなると、初七日、49日、100日、1周忌、3回忌と執り行うのは、この裁きの結果によって、死者がどこかへ旅立つのか決まると考えられていたためである。つまり、旅立ちに対しての餞(はなむけ)であり、裁判官への現世からの嘆願なのだ。極端に善人だったり、悪人だったりすれば最初の王(秦広王という)で行き先はすぐに決定する。5番目の裁判官である閻魔大王が有名なのは、死者の生前の行いをすべて見ることのできる鏡を持っていて、嘘をついて自らの行いについて言い逃れができない手強い王だったせいかもしれない。

●地獄を見て涼しくなろう

 地獄には「八大地獄」と呼ばれる形態があり、この中にまたいくつもの地獄がある。現世で犯した罪の重さによって落ちる地獄の種類も変わる。最下層は無間(むげん)地獄である。

 一方で救いもある。地獄にはお地蔵さまがいて、少しでも見所のある亡者を引き上げてくれるのである。地獄に仏とは、まさにこの「地蔵菩薩」のことなのだ。ちなみに、日本ではこの地蔵菩薩は閻魔大王の化身(別の姿)と言われている。人気の秘密はここにもあるのかもしれない。

 世界中には地獄を描いた絵画が存在するが、日本ほど多くの地獄絵を持つ国もないだろう。現在、三井記念美術館(中央区日本橋)では「地獄絵ワンダーランド」が開催(9月3日まで。9月23日~は京都・龍谷ミュージアムにて開催)されていて、多くの地獄絵や十王たちの姿が展示されている。加えて今回の展示には水木しげる氏の描いた地獄絵が含まれていて、地獄をより身近に感じることができる(!?)。

 灼熱地獄のようなこの夏のお盆休み、大人も子どもも楽しめるお出かけ先として、間違いなく涼めるこんな場所はいかがだろうか。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

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