ショートは太田英毅(智弁学園・奈良)、嶋谷将平(宇部鴻城・山口)、園部佳太(いわき光洋・福島)など全国的に好素材が多いが、スケールの大きさから藤田直仁(川島・徳島)を選出したい。特筆すべきはそのスローイング。三遊間の深いところから低い軌道でファーストに一直線で届き、その強肩ぶりはとても高校生とは思えない。190cm近い大型選手だが、フットワークにも軽さがあり、シャープなスイングで強く引っ張れるバッティングも高レベルだ。日本人選手ではなかなかいないタイプであり、大きく育ってもらいたい選手である。

 最後の外野手は正木智也(慶応・神奈川)、福元悠真(智弁学園・奈良)、夏伐京平(国士舘・西東京)の三人を選んだ。正木と福元は下級生の頃から中軸を任せられている右の強打者。正木は力みなく楽に振って飛距離の出るバッティングが長所で、その長打力は関東でも指折りの存在だ。少しバットが外回りする悪癖も修正されてきており、夏は右中間へも放り込んで見せた。福元は強靭なリストを生かしたライナー性の打球が持ち味。広角に強く打ち返すバッティング、積極的な走塁と強肩は高校生ではトップクラスだ。夏伐は完全な一芸名人で、とにかくその脚力は普通ではない。一塁到達タイムは4.0秒を切ればかなりの俊足と言われているが、夏伐は悠々と3.8秒台で走り、セーフティバントでは3.6秒台に迫る。これはプロでも上位のレベルであり、走塁のスペシャリストとしての大成が期待できる選手である。

 9月に行われる「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の第1次候補選手は既に発表されているが、最終メンバーの決定は甲子園大会期間中を予定されている。毎年選ばれる高校日本代表は甲子園出場経験のある選手が中心となっているが、本当の最強チームを作るのであれば、それ以外の選手から幅広く選出すべきだろう。今回紹介した選手達は十分、その候補になり得る選手達であることは間違いない。(文・西尾典文)

2017年夏の甲子園不出場選手から選ぶベストナイン
投手 :石川翔(青藍泰斗・栃木)
捕手 :村上宗隆(九州学院・本)
一塁手:清宮幸太郎(早稲田実・西東京)
二塁手:安里樹羅(健大高崎・群馬)
三塁手:安田尚憲(履正社・大阪)
遊撃手:藤田直仁(川島・徳島)
外野手:正木智也(慶応・神奈川)
外野手:福元悠真(智弁学園・奈良)
外野手:夏伐京平(国士舘・西東京)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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