もちろん、今回、陸幕長の岡部氏が引責辞任するため、後任の山崎新陸幕長がすぐに統幕長に昇格することはありえない。普通に考えると、今回は陸自を飛ばして、空自に順番を回すという可能性が高い……。

 少なくとも陸自幹部はそう覚悟しているだろう。

 そうなれば、自衛隊の中での陸自の地位は大きく下がる。単に岡部陸幕長や処分された陸自関係者の個人の処遇だけでなく、陸自という組織の勢力維持拡大という観点からも重大な事態なのである。いわば、歴史的大災害と言っても良いだろう。

 このような大災害を招いたのは、他でもない陸自幹部自身の情報隠ぺい工作によるものだが、何故、そんな馬鹿なことをしてしまったのだろうか。

●安倍政権の意向を忖度したのか?
 
 2016年7月の情報公開請求があったとき、陸自の現場は、日報の存在を隠す判断をしている。文書が物理的に存在するのに、情報公開請求に対して不存在と回答する場合の官僚の言い訳は、「物理的に存在しても、単なる個人のメモ、あるいは、ただの走り書きのようなもので正式なものではないから『行政文書』としては存在していない」という理屈である。加計学園問題で文部科学省でも同様の言い訳が使われたことは記憶に新しい。

 今回のケースでは、組織内のネット上で多数の職員が閲覧できる形で存在したものだから立派な行政文書なのだが、それを捻じ曲げて、不開示決定をしてしまった。
その時の陸自関係者の意識は、こういうものではないか。

 安保法に基づいた「駆けつけ警護」の新任務を付与した部隊の南スーダンへのPKO派遣の準備が事実上進められている中で、「現地の情勢が危険である」という情報を陸自が持っていたということになれば、安倍政権が非常に困る。ましてや文書に「戦闘」という言葉が使われていることがわかれば、PKO派遣が困難になる可能性は極めて高い。それは、政策的な問題でもあるが、安倍政権から「どうして、不用意に戦闘などという言葉を使ったのか。あまりにも軽率だ。陸自の現場への指導がなっていない」と叱責される恐れがある。そうなれば、陸上幕僚関係者が次の人事で懲罰的な処遇を受けるかもしれない。やはり、隠すしかないのではないか……。

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