■古い日本の企業の考え方をアップデート

 日本の最大の強みは経済です。しかし、労働人口が減少する中で規模の拡大を追求するやり方には限界が見えています。今後日本に問われるのは、量より質です。つまり、単なるGDPよりも、1人当たりのGDPを上げていくことが大事なのです。私は、テレワークによって、業務への集中力が高まると考えています。

 私がこれまで働いてきた外資系企業の同僚たちを見ていて、また私自身の体験として、ずっと同じ場所に座って仕事をすることが、今、世界中でビジネスパーソンに最も必要なスキルの一つといわれているクリエイティブ思考を、いかに削いでしまうかを実感しているからです。テレワークが広がれば、クリエイティブ思考を使う業務の生産性は向上するはずです(クリエイティブ思考は、必ずしもモノづくりやデザインなどの世界だけのものではありません)。

 さらに、会社への出勤が難しいために仕事を辞めざるを得なかった人たちが業務を行うことが可能になるので、労働人口減少を食い止める一助にもなるでしょう。

 とはいえ、現場の意見を聞いていると、安易に取り入れることには危機感も感じます。例えば、ある会社の従業員はテレワーク制度を利用して、どこで働いても構わないということになっています。しかし、会社側が監督業務を優先するあまり、9時から5時以外の時間にはパソコンにログインすることを一切禁じています。これでは、その時間以外にしか働けない人には機能しない中途半端な制度になってしまいます。

 テレワーク=自由裁量と考えた場合、時間を基本とした監督業務を思い切って排除する意思決定が必要です。でなければ、テレワーク制度を導入しても、結局は中途半端に終わります。テレワークを支えるテクノロジーは確かに存在します。しかし、まずは、このような古い日本の企業の考え方をアップデートする必要があると私は思います。(寄稿/瀬戸和信)