テレワーク導入のカンフル剤として、7月24日に「働く、を変える日(テレワーク・デイ)」と題して全国でテレワークが初の試みとして実施されました。

 この活動は、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府が東京都及び経済界と連携して展開した国民運動です。2020年東京オリンピックの開会式が行われる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、交通機関や道路が混雑する始業から10時半までの間、事前に参加表明をした団体が一斉にテレワークを実施するという国民運動です。

■日本の生産性は26年間改善されていない

 テレワークが注目される理由について、重要なことを抑えておきましょう。すでに現在、実直に長時間労働をしているだけでは、世界の競争に取り残されてしまうと私は考えています。

 日本人がいま真摯に受け止めるべき事実は、日本よりも格段に休暇の取得率が高く、労働時間が少ない欧米諸国の多くが、日本よりも1人当たりのGDPが高いという事実です。欧米諸国と日本を比較したデータがあります(図表)。これはPPT(購買力平価)で算出したもので、物価の違いなどが調整されています。

 これを見ると、日本は30位で決して効率のいい国とは言えません。アメリカ(13位)はもちろん、同じアジア地域のシンガポール(4位)、香港(12位)にも遠く及びません。欧州においては、7月の後半から、8月のほとんどをバカンスに費やすフランス(28位)よりも生産性が低いのです。そして参照先のIMF(国際通貨基金)のデータを過去に遡っていくと、残念ながら日本は1990年から26年間、ランキングが下がり続けているのです。

 一般的に、日本の生産性が低い理由は残業、長時間の会議、規則の多さだと言われています。特に残業や長時間労働はコストの問題を生じさせるだけではなく、生産性も悪化させます。つまり、働けど働けど結果が出ないという厳しい状況が、26年間改善しないまま放置されているのです。これは、危機的な状況と言っても過言ではないと私は考えています。

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