新たな打法で打撃開眼した感のある水口大地(c)朝日新聞社
新たな打法で打撃開眼した感のある水口大地(c)朝日新聞社

 明らかにそのバットの軌道は下から上へ振りあげている。

 支配下登録選手の中で12球団一の小柄な選手として知られる西武・水口大地(163センチ、60キロ)のバッティングは、その体には似つかわしくない、いわゆるアッパースイングだ。

 日本の野球界には、バッティングの基本として上から叩きつけてゴロを転がすという考え方がある。少年野球の指導者からそう教えられてきた人も多いだろう。

 しかし、近年はいいバッティング=ダウンスイングばかりではないという発想が生まれてきている。守備・走塁での出場機会が多かった水口は、今季36試合に出場、41打数14安打、打率.341をマーク。代打としての出場もある。下から上に振り上げるスイングで、打撃開眼の可能性を感じさせている。

 水口は、自身のスイングについてこう語る。

「追い込まれたときは粘らないといけないので、その場合は別ですけど、基本的には、思い切り振りたい。叩きつければ内野安打になりやすいというのもありますけど、バットの芯に当てること、自分の振りやすいバットの軌道で芯に当てやすいフォームを見つける方が大事だと思っています。バットは下からの方がコンタクトしやすい」

 不思議なのは水口が球界一の小兵選手であるということに加えて、バッティングスタイルが足を生かした好打者タイプであるという点だ。当然、転がせば内野安打になる可能性が高くなる。そう考えれば、ますますボールを叩こうという意識が働いて当然だ。

 しかし、水口はそう考えない。

「僕の場合は、身体を大きく使いたいので、まず、練習では身体全体で振りに行くことを意識しています。そうすると、トップを深く作ることができます。試合の打席では、どうしても小さくなってしまいがちですから、練習では振り抜いていくという姿勢を大事にしています。上から叩いてボールを切るようにコンタクトしてヒットにできる能力のある人はそうしたほうがいいかもしれませんけど、僕は、ヒットゾーンに打っておけばいいという考えなので、身体を大きく使って振り上げるようにした方が確率は上がる」

 水口のそんな話を聞いている時、ふと彼のチームメイトのある選手の姿が浮かんだ。2015年に、プロ野球新記録となるシーズン最多の216安打を更新した秋山翔吾だ。

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