後半になると興梠に代えてズラタン、森脇に代えてリベロに那須大亮を投入し、遠藤航をリベロから右ストッパーに移した。さらに宇賀神を駒井善成に代えた浦和は全体のラインを上げ、前からのプレッシャーを強めた。47分には左のスローインからの展開でボールを奪われてしまったが、そこから一気にリトリート(後退)するのではなく、ボールホルダーに厳しく付き、縦に運ばれてもDF陣ができるだけ我慢して、深い位置までボールを持ち込ませないという守備を見せた。

 ただし、エムレ・モルに突破されて同点にされたシーンはリスタートの流れから自陣に引いていた状況で、ドルトムントのつなぎに対し、途中出場で左のシャドーに入った高木俊幸とボランチの柏木の受け渡しが混乱したところを突かれた。そこからDFの槙野智章が一瞬で抜かれたところは個の対応の問題だが、その前段階の対応がもったいないシーンではあった。そうした隙をドルトムントのような相手は見逃してくれないということだ。

 一方で、浦和の2失点目は高い位置でボールを奪いに行った“代償”とも言えるかもしれない。槙野が最終ラインから前に出てモルにプレスをかけたが、かわされて裏を取られてしまった。ややアンラッキーだったのは直後にカバーした那須の足にボールが当たり、サイドに流れたところを左サイドからオーバーラップしてきたシュメルツァーに拾われてしまったことだ。

 そこからマイナスのパスをペナルティエリア内の左に侵入したモルに通されたわけだが、こうしたシーンで機を逃さないシュメルツァーの抜け目なさと、モルのシュート技術にやられてしまった格好だ。浦和はすぐにセットプレーから遠藤のゴールで2−2に追い付いたものの、その3分後に遠藤のクリアミスからシュルレに決められて敗れる結果となった。

 浦和は大きく2つの戦い方をトライした結果として“惜敗”を喫した。前半はカウンター、後半はポゼッションからの攻撃が主体となった中で、広い展開でサイドを起点にし、連動して中央を突く攻撃パターンがうまく噛み合うと、浦和の独特なスタイルに慣れていない相手に対しては“格上”でも十分に動揺させることができることを示せた。

 ただ、そのなかでモルの個人技への対応、そして3失点目のように相手の大きな展開に対してミスが生じるといった課題が出た。ドルトムントはコンディションが万全ではなく、戦術的にも手探りの状態でありながら、1つひとつのパススピード、正確性、ボールを運ぶ鋭さといった部分でやはりJリーグのクラブにないクオリティーの高さを見せつけた。交代人数が多くてテスト色が強かったものの、90分の中で浦和が得た刺激は小さくない。

 この財産は、もしACLを制して12月に行われるクラブ・ワールドカップに出場できればダイレクトに生きてくるはずだが、まずはJリーグで地に足を付けた戦いを取り戻し、いるべき場所に浮上することが浦和に課された使命だろう。(文・河治良幸)