刑事ドラマの中には、「本当?」と首をかしげたくなるシーンが多い(※写真はイメージ)
刑事ドラマの中には、「本当?」と首をかしげたくなるシーンが多い(※写真はイメージ)

 刑事ドラマはいつの時代も人気が高いが、なかには「本当にこんなことがあるの?」と首をかしげたくなるようなシーンもある。刑事ドラマはあくまでエンターテインメントなので、大げさなシーンが多少あるのは致し方ない。だが『そこが知りたい!日本の警察組織のしくみ』(朝日新聞出版)の監修者である古谷謙一さんによると、それでも、本物の刑事が見たら苦笑するような捜査方法が出てくることがあり、「これは違法捜査なのでは?」となる場面もあるそうだ。

 アンタッチャブルな刑事ドラマの代表的存在が、柴田恭兵演じるユージと舘ひろし演じるタカが活躍する『あぶない刑事』(日本テレビ系)だ。2人は横浜の港警察署捜査課所属だが、組織犯罪対策課の仕事である違法薬物の摘発や密輸の捜査も行っていた。これは警察では越権行為にあたり、本来はタブーとされているのだが、『あぶない刑事』は破天荒なアクションや型破りなセリフ回しが魅力の作品なので、「あれはあり得ないよ」と真剣に突っ込む人は、それほどいなかったはずだ。

 違法捜査は文字どおり「法に反した捜査なので、許される行為ではない。しかし、現実世界でもごく稀に違法捜査が行われ、ニュースで報じられることがある。

 例えば、刑事ドラマでは「おとり捜査」のような、適法かどうか判断に迷う捜査手法が出てくる。罪を犯す可能性がある人物に犯罪の実行を働きかけ、犯罪を実行したところで検挙するのがおとり捜査で、「犯意誘発型」や「機会提供型」などのパターンがある。犯罪の意思がない者に犯意を生じさせるのが前者で、犯罪の意思を持つ者に実行の機会を与えるのが後者である。

 刑事訴訟法には、おとり捜査に関する規定がない。そのため、有効か無効かについては裁判官が判断するしかない。だが2004年、最高裁判所はおとり捜査について、「機会提供型は違法だが、犯意誘発型は適法」という見解を示している。

 また、刑事ドラマでは、殺人の容疑者を取り調べるため、まずは別の事件で犯人を逮捕する「別件逮捕」の場面が出てくる。これは実際の捜査現場でも行われており、決して違法ではない。ただし、その「別件」で確実に逮捕できることが大前提なので、ドラマでは公務執行妨害など、令状を必要としない現行犯逮捕で連行し、捜査に持ち込むことが多い。

 他にも、最近は全地球測位システム(GPS)を使った捜査も行われているが、なかには令状なしで発信器を対象車両に取りつけ、法廷闘争に持ち込まれたケースもある。司法でも違法か否かの意見は分かれていたが、2017年3月、最高裁大法廷は「令状なしのGPS捜査は違法」と断定した。

 実際の警察組織と比較することで、刑事ドラマや小説をより深く楽しんでほしい。