被本塁打が多いことの要因はいくつもあるはずで、コントロールミスの多さが一番。それに加え、“飛ぶボール”の影響を受けている部分もあるのかもしれない。今季のメジャーではホームランが量産され、ステロイド時代真っただ中だった2000年の合計5693本を上回るペースで頻発している。

 特に6月はメジャー全体で1101本のホームランが飛び出し、月間最多記録を更新。これほど打球が良く飛ぶ理由が、MLBで使用されているボールにあると見る選手、関係者は後を絶たない。

「ボールが変わったことは明らかだ。(自分のように)これまでマメができることなんてなかったピッチャーが指にマメを作っているんだからね」

 田中と投げ合った7月3日の試合では右手にマメができたがために5回で降板したマーカス・ストローマン(ブルージェイズ)は、試合後に今季のボールの変化を指摘していた。

「メジャーでは使うボールの質も良くて、よく飛んでいく。マイナーでは2塁打だった打球がメジャーではホームランになったりする」

 開幕直後、今季のメジャー最大のセンセーションを巻き起こす活躍をしているアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が筆者にそう述べてくれたことがあった。

 球界最高の左腕と呼ばれるクレイトン・カーショー(ドジャース)もすでに自己ワーストの18被本塁打を許していることなど、奇妙に感じる要素は少なくない。「スポーツ・イラストレイテッド」誌の有名記者トム・バードゥッチも、前半総括でボールが変わったことを断言している。

 この“飛ぶボール”の件について、田中も先月の時点で地元記者にコメントを求められていた。検証は難しいが、ボールの変化が真実だとすれば、もともと被本塁打の多い田中がより大きなダメージを受けていることは想像に難くない。

 もっとも、他の投手も条件は同じ。この件を言い訳にはできないし、田中ももちろんそれはしていない。後半戦では何とか被本塁打数を減らし、ダメージを最小限にすることがポイントになる。ボールの反発力が高いのなら、これまで以上にバットの芯を外すように細心の注意を払うしかない。

 できる限りボールを低めに集め、致命的な大飛球を可能な限り避けられるか。“ホームランの時代”をサバイブする術を探ること。後半戦の巻き返しに向け、田中にとってその部分が最大の焦点になるはずだ。(文・杉浦大介)