ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の采配、戦術が選手への負担を増している(写真:getty Images)
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の采配、戦術が選手への負担を増している(写真:getty Images)

 昨季のJリーグで、年間勝ち点トップの浦和レッズが今季は苦しんでいる。第18節を終えた時点で勝ち点29の8位、首位のセレッソ大阪とは勝ち点が9差もある。

 昨季の18試合終了時には勝ち点36を稼ぎ出していた。得点数は28から43に大幅増となっているが、失点数も17から30へ増えた。この失点数は、昨季のリーグ終了時に28だった数字を約半数の試合で上回っているものだ。それだけ失点の増加が、チームから安定感を奪い去っている。

 4月30日のJリーグ第9節・大宮アルディージャ戦で0-1の敗戦を喫したことが大きな分水嶺になっている。その大宮戦を含むリーグ直近10試合が3勝1分6敗であり、今季のリーグ7敗のほとんどがこの期間に記録されている。

 その失速を招いた要素として言えるのが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督による流動性の低い選手起用が引き起こす疲労の蓄積にある。特に守備陣であるGK西川周作、DF森脇良太、DF遠藤航、DF槙野智章、MF阿部勇樹は不動であり、AFCアジア・チャンピオンズリーグと並行しての過密日程を強いられた4月までのゲームでかなりの負担が掛かった。シーズン序盤を負傷欠場したMF柏木陽介も、復帰してからはほとんど休みがない。

 そのような状況で気温の上がる5月以降の戦いを迎えた時に、どうしてもピッチ上で集中力の欠如や判断の遅れ、ボール際で競り負けるシーンが増えてしまっている。シーズン序盤のうちに選手のローテーション起用、あるいは選手交代を活用して、少しずつでも休養を与えながら戦うことができていれば、現状は大きく違ったのではないだろうか。

 また、ペトロヴィッチ監督が就任してから6シーズンに渡って取り組んでいる攻撃的な戦術も、後方の選手たちへの負担を大きくしている。自分たちがボールを保持している際に、多くの選手が敵陣に入り込むことを要求されていることで、ボールを奪われた瞬間に少ない守備者で守ることが必要になる。ただでさえ疲労を抱えて厳しい状態にある選手たちが、相手にとって有利な状況で浴びるカウンター攻撃に対処しきれない場面も多い。

 第17節のサンフレッチェ広島戦、続く川崎フロンターレ戦で浦和は合計7失点したが、PKの1点を除いてすべてがゴール正面に近いポジションで相手にフリーの状態で打たれたシュートだった。最終的な守備局面で、相手の攻撃についていけていないことが浮き彫りになっている。

 昨季の年間勝ち点1位は、攻撃的なサッカーを標榜しながらもリーグ最少失点を達成した安定感のある戦いによるところが大きかった。爆発的な攻撃力を下支えする守備の再建を成し遂げられるかに、強い浦和が復活するかどうかが掛かっている。(文・轡田哲朗)