記者会見で神戸のユニフォームに腕を通したルーカス・ポドルスキ(写真:Getty Images)
記者会見で神戸のユニフォームに腕を通したルーカス・ポドルスキ(写真:Getty Images)

 元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(32)がJリーグのヴィッセル神戸へ移籍したニュースは、彼の母国ドイツでも大々的に報じられている。

 7月6日に来日した翌日の大衆紙である「ビルト」のケルン版(ケルンはポドスルキの生まれ故郷)の紙面では、1ページ丸ごと使ってポドルスキの神戸での初日の様子を伝えた。しかも、同紙のWebサイトでは、ポドルスキが日本に到着してからの動向を細かくアップしていた。それはスポーツ専門誌「キッカー」でも同様で、1ページを割いて報じた。なお、昨年9月まで8年弱にわたってドイツに住んでいた筆者のもとへも、ポドルスキのインタビューをするためにヴィッセル神戸の広報担当者の連絡先を教えて欲しいと、ドイツ人記者から問い合わせがあった。

 報道の内容に目をむけてみると、専門誌の「キッカー」ではヴィッセル神戸の日本での状況や記者会見の様子を丁寧に伝えると同時に、「ポドルスキは(7月末の選手登録期間の前なので)まだプレーしていないが、すでに彼の加入の効果はある」と報じている。大衆紙の『ビルト』では、ポドルスキが空港に到着する直前の写真から、到着後にファンを背景に写真に収まる様子に至るまで、写真をふんだんに使って伝えた。さらに、「日本の出版物の40%はマンガである」と記したうえで、彼が「キャプテン翼」の読者であることを紹介しつつ、ヴィッセル神戸でプレーしているポドルスキを描いたマンガの一コマを独自に作成していた。そんな扱いを見ていると、スポーツの話題というよりも、ハリウッドスターの来日を報じているかのようだ。

 では、どうしてそのような扱いになるのだろうか。

 ポドルスキはドイツ代表で歴代3位となる130試合に出場し、4位となる49ゴールを決めているため、『記録に残る選手』であるかのように日本人の目には映るかもしれない。しかし、彼がそれだけの成績を残せたのは、ドイツ代表が2006年のW杯以来、出場したすべての主要世界大会でベスト4位以上の成績を残すという歴史上もっとも成功している時期と代表でのキャリアがほぼ一致しているから。むしろ、ポドルスキはドイツでは『記憶の人』である。優勝を果たした14年ブラジルW杯ではグループリーグの2試合に出場しただけだが、サブに甘んじても腐ることなくチームを盛り上げたり、地元ブラジルの人たちと交流したりすることで、チームにポジティブな風を吹き込む存在だった。

 そんな彼のキャラクターがあるからこそ、32歳というキャリアの晩年での移籍が大きく扱われた。あとは、彼がピッチの上で結果を残せるかどうか。もし結果を残せれば、かの地でもポドルスキの様子はさらに伝えられるだろうし、ヴィッセル神戸がドイツで最も有名な日本のクラブとなっても不思議ではないのである。(文・ミムラユウスケ)