兵庫もセンバツベスト4の報徳学園と昨年秋の近畿大会で大阪桐蔭を破っている神戸国際大付を筆頭に激戦が予想される。報徳学園はセンバツを最後に長年指揮を執った永田裕治監督が勇退したが、その後の春の県大会でも優勝して地力を見せた。二番手以降の投手に不安はあるものの、総合力は高い。神戸国際大付は黒田倭人、岡野佑大と経験のある左右の投手がいるのが強み。爆発力はないが、野手もしぶとい打者が揃っている。好投手を擁する市立西宮と育英、年々力をつけている明石商なども面白い存在だ。

 埼玉も県大会3連覇を目指す花咲徳栄と春の関東大会の覇者である浦和学院の二強が頭一つ抜けている。花咲徳栄は昨年の甲子園を経験したメンバーに、この春ブレイクした2年生スラッガー・野村佑希が加わり、充実の戦力を誇る。近年多くのプロ選手も輩出しており、育成力の高さは関東でも屈指だ。浦和学院は豊富な投手陣が売り。特に春の関東大会全試合にリリーフ登板した佐野涼弥のスライダーは一級品。短いイニングで攻略するのは困難だ。秋春連続で県大会ベスト4の春日部共栄、新興勢力の叡明、公立の実力校である市立川越なども力はあるが、二強の牙城を崩すのは容易ではないだろう。

 一方、一強時代が続いている地区もある。その連覇が続くかという点にも注目だ。福島は聖光学院が戦前に記録された和歌山中(現桐蔭)の14連覇に次ぐ10年連続出場中だ。13年秋に日大東北に敗れて県内の連勝記録は95でストップしたものの、それ以降も県内で負けたのはわずかに2回。夏の大会に限れば60連勝中である。過去4年間の決勝は全て1点差ゲームであり、決して楽に連覇を続けているわけではないが、大本命であることは間違いないだろう。それに続くのが7年連続の明徳義塾(高知)、6年連続の作新学院(栃木)。両チームとも今春のセンバツにも出場しており本命であることは間違いないが、夏の甲子園への道のりは険しいものになりそうだ。

 その高知では明徳義塾と過去10大会で7度決勝で対戦している高知(対戦成績は明徳義塾の5勝2敗)、昨年秋の県大会決勝で明徳義塾を完封で敗った中村が対抗馬。そして初戦の2回戦で対戦する可能性が高い高知商も昨年夏に苦しめられており侮れない相手だ。栃木で作新学院の対抗となるのが白鴎大足利だ。春の県大会決勝では背番号10の仁見颯人が作新学院を見事に完封。エースでプロ注目の145キロサウスポー北浦竜次との二枚看板と強力打線で、甲子園を狙えるだけの戦力は揃っている。またノーシードながら関東ナンバーワンの呼び声高い石川翔を擁する青藍泰斗も作新学院にとって厄介な相手と言えるだろう。

 ここに挙げたのはほんの一部であり、他にも注目の地区、チームは数多く存在している。参加チーム、高校の野球部員の減少が叫ばれているが、これだけの規模で一斉に行われる野球イベントは世界でも類を見ないことは間違いない。甲子園を目指した全国での熱い戦いにぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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