早稲田実の主将・清宮幸太郎(c)朝日新聞社
早稲田実の主将・清宮幸太郎(c)朝日新聞社

 6月18日の沖縄大会を皮切りにスタートした高校野球の地方大会。今月の7日から9日にかけて28の地区で開幕し、甲子園出場をかけた戦いもいよいよ本格化するが、ここでは全国でも特に激戦が予想される注目の地区を紹介する。

 最注目はセンバツの決勝で対戦した大阪桐蔭、履正社がいる大阪だ。センバツ後に行われた春季大会では大阪桐蔭が近畿大会で優勝したのに対し、履正社は府大会の5回戦で東海大仰星に敗れ、明暗が分かれた。大阪桐蔭は、正捕手の岩本久重を欠きながら、センバツで優勝したことからもわかるように、選手層の厚さは間違いなく日本一。攻守とも高校トップレベルの選手が顔を揃えている。

 履正社はエース・竹田祐がセンバツの時から、いまひとつ調子が上がらず、控え投手も不安定なのが気がかりだ。打線の迫力では、決して負けていないだけに投手陣の出来がカギとなる。ちなみに、両校の過去10年間の対戦は15勝6敗で、大阪桐蔭が勝ち越している。夏の大阪府大会に限れば、05年以降9連勝中である。二強以外では春の府大会で履正社を破った東海大仰星、秋の府大会優勝校の上宮太子、力のあるサウスポー二人を揃える大体大浪商などが続く存在だろう。

 そして大阪以上の盛り上がりを見せそうなのが西東京だ。清宮幸太郎擁する早稲田実とその好敵手である日大三。昨年秋は8-6、そして春は18-17という壮絶な打撃戦の末、早稲田実が競り勝っている。しかし戦力的には日大三が有利と見る声が多い。理由は、早稲田実の不安定な投手陣にある。春の都大会でも準決勝までの5試合で22失点を喫しており、不安は解消されていない。2年ぶりの夏の甲子園出場のためには、とにかく打ち勝つしかないだろう。

 この二強と変わらぬ戦力を誇ると見られているのが東海大菅生だ。複数の力のある投手を揃えており、投打のバランスの良さが光る。三年連続西東京大会の決勝で敗れているだけに、今年こそという思いも強いだろう。高い攻撃力が武器の国士舘、昨年夏に早稲田実を破った八王子などがそれに続く。

 ハイレベルの二強という意味では、健大高崎と前橋育英がしのぎを削る群馬を忘れてはいけない。春、秋も含めた過去10回の県大会では前橋育英と健大高崎がともに4回ずつ優勝している。甲子園でも13年夏に前橋育英が優勝。健大高崎は12年の春以降でベスト4に1回、ベスト8に3回、それぞれ進出する実績を残している。直接対決では、前橋育英が5連勝中だが、そのうち3試合が1点差とまさに実力は伯仲している。今年のチームも前橋育英は全国でも屈指の投手陣を揃え、健大高崎も変わらぬ機動力に長打力が加わった打線は強力であり、どちらが甲子園に出場しても優勝候補の一角となることは間違いないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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