元横綱の貴乃花親方が育てた貴景勝(c)朝日新聞社
元横綱の貴乃花親方が育てた貴景勝(c)朝日新聞社

 7月9日に初日を迎える大相撲名古屋場所は見どころいっぱいだ。左上腕二頭筋損傷で夏場所を途中休場した稀勢の里は復活なるか。一方、安定した実力をつけて昇進した新大関高安は、初優勝も十分に狙える。

 連覇を狙う白鵬は、魁皇(現・浅香山親方)の持つ通算最多勝利数の史上最多記録1047にあと11勝と迫っており、更新への期待がかかる。そんななかで、あえて紹介したいのが、風のように番付を駆け上がってきて、今場所初めて横綱・大関への挑戦が期待される“新鮮力”たちだ。

 1人目は貴景勝。あの元横綱の貴乃花親方が育てた初の日本人幕内力士だ。本名の佐藤貴信の「貴」は、貴乃花にちなんでつけられたもの。小学生の時に貴乃花部屋であった相撲体験イベントに通って目をかけられ、以来、将来は親方の弟子になると大きな夢を抱いて稽古に励んできた。

 報徳学園中で中学横綱に輝き、埼玉栄高では世界ジュニア選手権の無差別級で優勝。高校卒業を待ち切れず、3年在学中の2014年9月に入門し、わずか3年足らずで横綱・大関との対戦圏に駆け上がってきた。173センチ、165キロと上背には恵まれていないが、抜群のスピードと相撲勘、勝負度胸を生かして活躍する可能性は十分だ。

 2人目は北勝富士。埼玉栄高で貴景勝の4年先輩にあたるが、すぐにプロ入りはせず、日本体育大学に進学した。大学在籍時に学生横綱などの個人タイトルを獲得すると、番付の一番下の序ノ口からではなく、幕下や三段目から飛び級でデビューできる「付け出し」制度がある。

 ただし、その有効期間は獲得から1年間しかなく、大学2年と3年時に付け出し資格を獲得した北勝富士は、中退すれば資格を利用できるなかで、その道を選ばず、学生仲間たちとインカレ団体優勝を勝ち取ることを目標に4年へ進学した。だが、北勝富士は個人タイトルに恵まれずに付け出しの資格は得られなかった。初土俵は一番下の序ノ口からだったが、腐らずに努力を続け、わずか2年あまりで幕内上位に進出してきた。

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