毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、文教大学生涯学習センター講師・早川明夫さんの解説を紹介しよう。

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 6月号では、福井県勝山市の「恐竜化石のたまり場」についてとりあげた。今月は、4月27日に発表された全長8メートル以上の恐竜の「全身骨格(※1)」化石について紹介しよう。

 この恐竜は、化石が発見された北海道むかわ町にちなんで「むかわ竜」と呼ばれている。2013年に尾椎骨(しっぽの骨)が確認され、その後、むかわ町穂別博物館と北海道大学による発掘と化石のクリーニング(岩石の中から骨の部分だけを注意深く削り出すこと)が行われてきた。

 むかわ竜は、7200万年前に生きていたハドロサウルスの仲間だ。ハドロサウルスは、白亜紀後期(※2)に北半球にすんでいた植物食の恐竜で、6月号で紹介したフクイサウルス(イグアノドン)と同じ鳥脚類に属する。

 むかわ竜は今回の発表までに、全身の半分以上の骨がどの部分の骨かわかり、それを並べて堂々たる骨組みが描き出された。恐竜化石の発見は体の一部の骨に限られることがほとんどで、全身骨格が見つかることはとても珍しい。国内では、今回が2例目だ。1例目は、これも6月号で紹介したフクイベナートルという全長2.4メートルの雑食の恐竜。むかわ竜は全長8メートル以上だから、これより圧倒的に大きい。

 全身骨格が化石になるためには、死んだ恐竜の体がバラバラにならないまま、後に地層となる泥や砂の中に埋もれなければならない。肉が腐り骨になった後で流されてもダメなのだ。むかわ竜は、死体が海の沖合に流され沈んで、うまい具合に海底の土砂に埋まったと考えられている。

 ハドロサウルスの仲間は50種類ほどいて、むかわ竜がどの種類なのか現時点ではわかっていない。全身の骨が数多くそろっていることは、むかわ竜を詳しく知るための情報が豊富なことを意味する。研究が進めば種名だけでなく、この恐竜の暮らしぶりや進化の様子などもわかってくると期待できそうだ。そして今後、できればむかわ竜より大きな恐竜の全身骨格が、またどこかで見つかることも期待したい。(解説/サイエンスライター・上浪春海)

※1)一般的に恐竜の化石は、全身すべての骨が見つかるわけではない。同一個体の骨の50%以上が見つかれば「全身骨格」といえる。
※2)白亜紀は1億4500万年前から6600万年前までの時代。1億年前を境に、前期・後期に分かれる。

※月刊ジュニアエラ 2017年7月号より

ジュニアエラ 2017年 07 月号 [雑誌]

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早川明夫
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