見ている側としては、「おお、ピリピリしてるな~!」と、ショーを見ている気持ちにもなりましたが、目を合わせないことや握手をしないことは警戒心や対抗心をわかりやすく表すボディーランゲージになるのだと改めて感じました。

 余談ですが、この討論会でうまいなあと唸(うな)ったのは、終始トランプさんにさえぎられていた司会者クリス・ウォレスさんのとっさに出たコメント。「ちょっと、私は植木鉢じゃないんです。ここにいるからには、質問させてください!」。ユーモアあふれる訴えに思わず笑ってしまいました。

 場の緊張感をほぐす会話や話題を「アイスブレイク」と言いますが、最も効果的なアイスブレイクは、視線と笑顔です。無理にのぞき込む必要はありません。相手がこちらに視線を送ったとき、やわらかく笑顔で受け止められるかどうか。「あ、こっちを見てくれた」という安心感は、出会いの初めには言葉を超える力を持っています。

 さらにもうひとつの大事なポイントは、目線の高さを揃そろえることです。ゲストが入って来られるとき、私はスタジオ内のDJブースの中で座っています。その状態で、入って来られるゲストのお顔を見ようとすると、見上げるような視線になってしまい、反対に相手は少し下を見ることになります。これではお互いに落ち着きません。

「人をお迎えするときには自分も立つ」のはマナーの基本でもありますが、やはり目線が同じ高さにあるほうが物理的にも心理的にも距離が近くなるものです。この「近さ」がポイントです。子どもに話しかけるときしゃがんで目線を合わせるのと同じ。大人同士であっても、目線が合うことはやはり安心感につながります。