もちろん、開会式に主催都市の代表として出席する権利は棒に振ることになる。また、オリパラ前に都知事選辞退と言えば、一瞬強い批判が起きるだろう。しかし、オリパラ直前の都知事選で、サプライズ候補として小泉進次郎氏が立候補すれば、そんな批判は吹き飛び、都民も国民も若き都知事誕生へと熱狂的な支持を示すだろう。選挙戦中は、常に小池・小泉ツーショットで自身の宣伝に利用する。開会式の日には、「次代を担う若い人の手で東京五輪・パラリンピックが開催されることを嬉しく思う」と言えば、国民は、小池氏に温かい拍手を送るだろう。日本人はそういう演出には弱いし、小池氏のパフォーマンス能力なら、これを演じ切るのはたやすいだろう。

 もちろん、進次郎氏がこれを受ける可能性は低いと思う方が常識的だろう。

 しかし、私は、進次郎氏から見ても、これは、悪い選択肢ではないと思う。

 彼は、現在36歳、20年には39歳だ。その時点でポスト安倍の争いに名乗りを上げても、自民党総裁に選ばれるのは至難の業だ。やる気のない安倍政権の下で中途半端な農業改革を担がされ、閣僚ポストを一つ、二つ経験することも総理への道ではあるが、東京都知事という要職を経験し、「東京五輪を開催した」という実績を作ることの方が国民へのインパクトは大きい。欧州の小国を上回る財政規模を持つ東京都の行政経験を積むことは、実質的な意味で政治家として大きな財産にもなる。進次郎氏の父小泉純一郎元首相は、小池知事を環境相に抜擢した支援者。今も良好な関係が続いているという。そうした縁も積極的な要素として働くかもしれない。

 小泉進次郎氏以外に、このシナリオに登場できる人材がいるかというと今は思いつかない。20年の都知事選に小池氏が出て首相への道を歩み始めるのか、それとも、逡巡しているうちに、維新と同じく、自民補完勢力になり下がる道をたどるのか。

 ちょっと早すぎる話題だが、今から気になるくらい、小池パワーのインパクトが大きいということなのである。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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