映画監督・中村義洋(なかむら よしひろ)/1970年生まれ、46歳。茨城県出身。現代劇から時代劇、サスペンスまで、幅広いジャンルを手がける。映画監督作品として『チーム・バチスタの栄光』『ゴールデンスランバー』『奇跡のリンゴ』『殿、利息でござる!』など多数
映画監督・中村義洋(なかむら よしひろ)/1970年生まれ、46歳。茨城県出身。現代劇から時代劇、サスペンスまで、幅広いジャンルを手がける。映画監督作品として『チーム・バチスタの栄光』『ゴールデンスランバー』『奇跡のリンゴ』『殿、利息でござる!』など多数

 戦国時代の天正伊賀の乱を描いた映画『忍びの国』(原作・和田竜、主演・大野智)が、7月1日に公開された。侍 VS. 忍びの派手なアクションや知謀戦、時代に翻弄(ほんろう)された忍びの夫婦愛を描いた歴史エンターテイメントだ。監督を務めた中村義洋氏に、映画の見どころや戦国時代の魅力について、漫画雑誌『真田太平記』編集部が聞いた。

――ベストセラー『忍びの国』を映像化するにあたって、意識した点は

 原作を読んで惹かれたのが、現代にも通じる“人のあり方”です。武士の生き方と忍びの生き方、どちらがより今の日本人に受け継がれているのか。それを考えてもらえる映画にしたいと思いました。『真田太平記』の読者には、ぜひ忍びの戦い方を見てほしいですね。合戦になったときに、どんな風に忍びが戦うのかという面白さを盛り込みました。

――映画では伊賀忍者を魅力的に描きつつ、対比して人の情もテーマになっています

 約束は守らない、人の命を全く重く見ない、一番大事なのは銭。一言で言っちゃえば、忍びは人でなしですよね。でも自分の人生を思い返すと、自分の知り合いにもそういう人は何人かいたんですよね(笑)。何も特別な有名人だけではない。そこが人の怖さであり、面白いところだと思います。人でなしにも、真っ当な人間の情にも、人はどちらにも感情移入できるのではないでしょうか。

――幅広いジャンルの映画を撮影されていますが、時代劇は難しい面も多いですか?

 僕は池波正太郎さん原作で始まった時代劇「必殺シリーズ」の大ファンなんです。必殺シリーズが一番面白い頃は本当に何でもありで、時代劇の自由さが詰まっていたんですよ。それをずっと見てきて、それでいいと思っているから、逆に時代劇には自由さを感じます。『殿、利息でござる!』(2016年公開作品)も、今回の『忍びの国』も、全然ハードルは高くなかったですね。

 他のスタッフたちから「時代劇でそれをやっていいんですか」と言われても、「これがなかったっていう証拠を出してくれたらやめるけど、ないでしょ?」と答える。もちろん時代が違うとわかっているようなものは使いませんが、わからない部分はどんどん自由にやっていいんじゃないかと思っています。

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