8月19日なんて夏休みで誰も東京にいないし、売る方も売る方でやる気がない日ですよね。そういういきさつもあって、最初にあった自信もどこかに消えてしまって、その時は売れるとは思ってなかったわけです。

 しかし、いざ発売を迎えると、お盆明けもなんのその。最初の店頭在庫の350枚は発売当日に売り切れ、倉庫にあった3000枚もあっという間になくなってしまいました。当時マッキントッシュの雑誌がいくつかあったんですが、雑誌では面白がってくれて、見開き2ページとか3ページとかカラーで大々的に取り上げてくれました。この影響が大きかったのかもしれません。結局量産に次ぐ量産で、1万枚以上売れました。

 この時「Train Simulator」を買って下さった人の半分ぐらいが、運転を楽しみたいがためにマッキントッシュと一緒に買ったそうです。ここからどんどん尾ひれがついて、今度は日本マイクロソフトの古川享会長(当時)から直々に「開発費補助するからWindows95用に作ってくれ」と頼まれまして、95年の年末にはWindows版でも出すことになりました。Windowsのほうがユーザーも多いので、当時で4万本は売れました。とにかくソフトの売れ行きがすごくて、当時のパソコンのソフトの販売ランキングは絶えず1位。「Train Simulator」を3本出せば、1、2、3位全部総なめにするような状態でした。累計すると25万本あの時売れました。

 ちなみに、この売れ行きを見て、これはいけるとタイトーのプログラマーが「Train Simulator」を社内プレゼンで使い、電車を運転するアーケードゲーム「電車でGO!」が誕生したそうです。この話は僕もあとになって聞いた話なのですが、とてもありがたい話だと思っています。当時から真似されたといって怒る気持ちは湧きませんでしたし、むしろすごい発想だなとリスペクトしていたほどです。この「電車でGO!」も、やがて「Train Simulator」と合体する形で、「Train Simulator+電車でGO! 東京急行編」というゲームを2003年に出しました。

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