ところが、6月19日に全日程が終了した交流戦では、セ・リーグの先発型サウスポーたちが楽天戦に先発、ことごとく結果を残したのだ。

 DeNA・濱口遥大、阪神・岩貞祐太、中日・小笠原慎之助、ジョーダン、広島・ジョンソンだ。楽天は交流戦で10勝8敗だが、このうち、5敗はサウスポーが先発した試合だった。

 もちろん、今季不調の吉川光夫(巨人)、石川雅規(ヤクルト)やルーキーの池田駿(巨人)は攻略しているし、対戦データが少ないというのもあって、一概に、「サウスポーは苦手」という判断材料にはならないが、炭谷が「情報量が少ない」といったところからの一つのヒントにはなるかもしれない。

 もっとも、最初に書いたように、パ・リーグは先発タイプのサウスポーの絶対数が少ないのは事実だ。西武の菊池以外にローテーションを守っているのは、オリックスの松葉貴大、日本ハムの加藤貴之しかいない。ここに、楽天戦で1試合登板し、6回を3安打無失点で1勝を挙げているロッテのチェンがいる程度だ。

 パ・リーグにサウスポーが多くいれば、楽天の「対サウスポー対策」は気になるところだが、23日の西武対ソフトバンク戦を見ると、菊池の存在が際だって重要度を増してくるというわけである。

 菊池にとっては「自分で乗り越えないといけない大きな壁」として、今後もソフトバンク戦を一大テーマとしてくる。ただそうであるからこそ、余計に他チームとの戦いは絶対に負けられない覚悟で臨んでくるはずだ。プロ初完封をあげた相手であり、今季、すでに2勝を挙げている楽天には負けるわけにはいかないだろう。

 このまま、菊池がソフトバンクに負け続け、楽天には勝ち続ける――。
 あるいは、菊池がソフトバンクという巨大な壁を乗り越え、勝利を挙げ――。
 また、あるいは、楽天が菊池を粉砕しサウスポーを難なく攻略する――。

 どう転ぶかで、ペナントの趨勢は大きく変わるだろう。

 もちろん、西武にとっても、菊池のこれからのピッチングは重要だ。現在3位につけ、楽天とソフトバンク戦の勝利は絶対条件。エースである菊池がこの両チームにどんなピッチングをみせられるかは大きなカギを握ってくるからだ。

 このまま順当にローテーションが回れば、菊池は7月6日の楽天戦に先発するだろう。8月4日にはソフトバンク戦も視界に入ってくる。

 パのペナントは一人のサウスポーによって左右されるのかもしれない。(文・氏原英明)