ただ、実際にはこの役割をうまくこなすのはなかなか難しい。背伸びして知ったかぶりをしても嫌われるが、何も知らずに的外れなことばかり言っているとそれはそれでバカにされてしまう。かといって、専門家並みの核心を突いた発言をしたところで、「あなたにそれを求めているわけではない」と思われてしまうのがオチだ。

 だから、「門外漢タイプ」のコメンテーターには、「そこそこ気の利いた的確で面白いコメント」というのが求められている。この務めをしっかりと果たせる人はそれほど多くはない。そこで芸人コメンテーターの出番ということになる。

 そもそも芸人というのは、長年にわたって「人を笑わせる」という最も難しいミッションをこなしてきた実績がある。場の空気を読んで、的確なコメントをすることにかけては右に出る者はいない。また、そこにちょっとだけ笑える要素を付け加えて、その場を和やかな雰囲気にすることもできる。

 特に最近では、朝や昼の情報番組でも芸人がMCを務めていることも多く、バラエティ色の強い情報番組に対する視聴者の心理的な抵抗も薄れてきている。それが芸人コメンテーターの積極的な起用に拍車をかけているのだろう。

 芸人でコメンテーターになるのは、40歳前後の中堅芸人が多い。本業である程度の地位に達していて、結婚をしたり子供を持ったりしている人もいる。彼らは、一人前の社会人という立場から、ニュースに対して自由にコメントをすることができる。

 テレビに出ている芸人の中で、最も層が厚いのがこの世代である。体を張った企画を積極的にこなすほど若くはないが、「大御所」と呼ばれるほどの年齢でもない。彼らの多くは「ひな壇芸人」と呼ばれ、『アメトーーク!』などのお笑い系のバラエティ番組で活躍してきた。

 そんなアラフォー世代の芸人にとって、コメンテーターの仕事とは、社会と向き合い、1人の「オトナ」としてコメントを発するという新しい種類のものだ。いわば、「ひな壇芸人」としてのスキルを情報番組に巧みに応用することで、彼らは優秀なコメンテーターになることができたのだ。

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