各局の朝・昼の情報番組では、最低1人は芸人コメンテーターが配置されているというケースが目立つ (c)朝日新聞社
各局の朝・昼の情報番組では、最低1人は芸人コメンテーターが配置されているというケースが目立つ (c)朝日新聞社

 テレビの情報番組に欠かせない存在となっているのが、MCの脇を固める「コメンテーター」と呼ばれる人たち。彼らは、番組で取り上げられたニュースについて、それぞれの立場から自由にコメントをする役割を与えられている。

 そして昨今、このコメンテーター枠に芸人の姿が目立つようになってきている。各局の朝・昼の情報番組では、最低1人は芸人コメンテーターが配置されているというケースが目立つ。

 多くの情報番組では、取り上げられるトピック自体を詳しく紹介することに主眼が置かれているため、コメンテーターの言葉は副次的な役割を果たしているにすぎない。しかし、近年では、スタジオの専門家やタレントが積極的に意見を交わし合う『バイキング』、松本人志を中心にさまざまなコメンテーターがじっくり意見を述べる『ワイドナショー』のように、コメンテーターの発言が主軸となっているような番組も出てきている。これらの番組の中でも、コメンテーターには芸人の姿が目立っている。なぜ芸人コメンテーターがこんなに増えているのだろうか。

 そもそもコメンテーターとは何だろうか。テレビのコメンテーターには大きく分けて「専門家タイプ」と「門外漢タイプ」の2種類がいる。例えば、前者の典型は政治評論家や弁護士である。彼らは、政治、経済、法律などの自分の専門分野にかかわるニュースに関して、分かりやすく解説を加えることを求められている。ニュースでよく取り上げられるジャンルの話題について深い知識があるということが、彼らの売りになっている。

 一方、「門外漢タイプ」は、情報番組で生かせるような確固たる専門分野を持っているわけではない。専門があったとしても、それにまつわる話題が取り上げられることは少ない。それなのに、彼らはなぜ起用されるのかというと、彼らこそが「普通の視聴者」の代弁者だからだ。

 彼らに求められているのは、独自の切り口のある鋭い意見ではなく、視聴者目線の素朴な感想である。仮に、番組の進行役であるMCと、専門知識のあるスペシャリストしか存在しない番組があったとしたら、視聴者には敷居が高く感じられてしまうだろう。それを防ぐためには、あえて「門外漢タイプ」のコメンテーターを配置して、一般人の目線で率直な意見を述べてもらうのが好都合なのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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