また、深沙大王が、疫病を除き魔事を遠ざける水神であったことに加え、のちに厄除け大師として名高い元三大師(がんざんだいし)を祀ったことも、深大寺の名を一層「厄除」の場所として知らしめてきた。毎年3月に開催される「厄除元三大師大祭」は、長い歴史と伝統を持つ深大寺最大の行事で、境内で開かれる縁起だるま市の賑わいは「日本三大だるま市」の一つとされているほどだ。

●高い鋳造技法を持つ「白鳳三仏」

 今年で創建から1285年目を迎えた深大寺だが、実は江戸時代に2度大きな火災にあっており、寺宝の多くと堂宇のほとんどを焼失している。

 このような災禍の中で、今回国宝指定を受けることになった「銅造釈迦如来像」は、1909(明治42)年に、元三大師堂の壇下から見つかった仏さまだ。当然、火災にあっているため、表面を覆っていた金箔は失われているが、飛鳥時代に作られた白鳳仏の姿を失わずにいる。奈良・新薬師寺の薬師如来立像(香薬師)、奈良・法隆寺の観音菩薩立像(夢違観音)とともに、この釈迦如来像が「白鳳三仏」と呼ばれるのは、用いられている高度な鋳造技法等に共通点が見られるためで、同派の制作者陣が奈良で作ったいくつかの仏像のうちの一体が、深大寺へ送られたのではないかと考えられているためである。加えて、倚像(台座に腰掛けた姿)の仏像は歴代を通して大変珍しい姿で、倚像の代表仏として深大寺の釈迦如来像があげられるほどなのだ。

 さて、法隆寺の観音さまは年2回の開帳(秘仏の公開)時のみしか拝観できず、新薬師寺の薬師如来立像の本物は盗難で現在所在不明という現在、深大寺の国宝仏への拝顔がどれほど貴重なものかお分かりいただけたかと思う。深大寺では、2018年3月31日まで「銅造釈迦如来像」の特別拝観を実施中である。

 7月21~23日には「鬼燈(ほおずき)まつり」、8月5~6日には「夕涼みの会」といった恒例の祭りも予定されている。暑い夏、涼しげに微笑まれている「白鳳仏」を拝顔し、冷たいお蕎麦を食べる散策も、また一興ではないだろうか。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

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