結論としては、「自分が最も幸せを感じるのは家族との時間。それがあれば仕事のストレスは乗り切れる」ということでした。

 当初、Aさん自身が認識していたストレッサーは「慣れないマネジメント業務をあてがわれた」ということです。

 今までは十数年かけて蓄積した専門知識を活かしてプレーヤーとして働いていましたが、会社から求められているマネージャー職では自分の専門性を発揮することはほとんどありません。Aさんが選んだもう一つのキャリアアンカー「専門重視」を選ぶ人は、自分の技術によって活躍することに喜びを感じるので、現状が重荷になっていたのです。

 けれど、自分が重視するキャリアアンカーや価値観を考えることでAさんは「家族との時間が一番大切」ということがわかりました。平日の夜や休日に奥さんと一緒に過ごしている時に、一番の幸せを感じていたことを思い出したのです。仕事が忙しすぎて考えられていなかったけれど、なるべく早く子どももほしい、温かい家庭をつくりたいと思うようになりました。

 専門的な仕事をしたいという志向もあるけれど、それよりも家族が大切。仕事の内容にこだわる志向は自分にとってそこまで大切なことではなかった。将来子どもを育てていくためにも、仕事で安定した収入を得ることが必要だ。ゆくゆくはマネジメント業務が主体になってくるだろうから、今の経験も無駄ではない─―。

 Aさんはこのように考えるようになりました。会社での責務も仕事量もまったく変わっていませんが、ストレスが軽減されたといいます。自分にとって本当に大切にしたいことを認識することで、現状に折り合いをつけることができたのです。