視覚障害者にとって難しい“服選び”で服よりも大切なもの (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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視覚障害者にとって難しい“服選び”で服よりも大切なもの

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有川美紀子dot.
湯浅さんが独自開発した「カラーパレット」。5つのシチュエーションでその人が使うとよい色を質感も異なる布でセットしている

湯浅さんが独自開発した「カラーパレット」。5つのシチュエーションでその人が使うとよい色を質感も異なる布でセットしている

2015年、女性を対象にした講座風景。正面中央が湯浅さん

2015年、女性を対象にした講座風景。正面中央が湯浅さん

2016年、男性を対象にした講座の様子

2016年、男性を対象にした講座の様子

「桜に触ったことがある?」「どんな感触がした?」

 受講生たちは口々に「花びらはすべすべで、とても柔らかかった」「木の下を通るとなんだか優しいいい匂いがした」など桜と接したときの思い出を語り出す。

「そうです、桜の花は強い色じゃなくて、柔らかくて、いい匂いがして、すべすべ。そういう“優しい色”なのよ」

 受講生は桜の花に触れたときのひんやりすべすべ、柔らかい感じや、桜からふっと感じた甘く優しい香り、そのときに吹いた柔らかい風を思い出し、それらの体験を色のイメージとして把握していく。触覚や嗅覚が色を作っていくのである。

 湯浅さんは日頃の仕事でも使っている「カラーパレット」を受講生一人一人のために作成した。これはクライアントの虹彩や肌の色を分析し名刺サイズのカードケースに約1万色の中から、その人に似合う色の布をセットにしたものだ。

 パレットは5つの内容に分かれており「ベーシック」「自分がメインになるとき」「誰かを立てなければいけないとき」「肌に一番近い色」「赤(赤はもっともパワーがあり、強い印象を残せる)」というシチュエーション別にセットされている。このパレットがあれば、店員に見せて同じ色のものを選んでもらえるので、一人で服を選ぶことができるのだ。

 しかし講座を進める中で、湯浅さんは受講生たちが真に求めているのは色ではないと感じた。受講生から来る質問が、

「ゴシックロリータファッションが好き。目が見えるゴスロリ仲間は私にはレースがいっぱいある服が似合うっていうけど、本当にそうですか?」

「バンドやっています。ステージに出るとみんな『カッコいい』って言ってくれる。でも、俺本当にカッコいいですか? みんなからどう見えているか率直に言ってください!」

 というように“自分は人からどう見られているのか”という点に集中していたからだ。

 しかし、自分をよく見せるのはスタイリングだけではない。目が見えないために彼らが気づいていないことがあった。それは仕草や表情である。


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