そして得意の「右打ち」だ。通算33本塁打で、シーズン最高は4本塁打。非力と言われた分、右方向へのバッティングを繰り返し練習して自らの武器とした。体の線が細くてパワーはなくても、ピッチャーのボールの勢いに逆らわず、二塁手の頭の上へ打球を飛ばす。2000本目も右打ち。楽天・美馬のスライダーに「まさか止めたバットでヒットになるとは」と本人は苦笑いも、その打球の軌道にこそ、荒木のこれまでの22年間が詰まっていた。

 所属する中日では、高木守道、谷沢健一、立浪和義、谷繁元信、和田一浩に次ぐ6人目の2000安打達成となったが、地元・名古屋での達成は初。「たくさんの声援をもらって『こんなに応援してもらっているんだな』とつくづく感じました。野球を辞めるまで、感謝の気持ちを持ってやりたいと思います」と荒木。両親も見つめる中での達成で、恩師の星野仙一氏と僚友の森野将彦から花束を手渡されると、「ちょっとウルッときました」と言いながらも、決して涙が頬を伝うことはなかった。「心の底から、このチームが強くなっていくことを次の目標とします。常々言いますが、自分がスタメンじゃないにしても、走れる状態を作っていくし、守れる体にもしていきたい。とにかく強くなっていきたい。その中のひとつのピースでいられればいい」。その愚直さで、名球会入りを果たした39歳。彼の野球人生には、まだ続きがある。