最後に優勝争いにも触れたいが、過去の大会を改めて振り返ってみるとこれまでの優勝回数では東京六大学と東都大学がともに24回で並んでおり、続く関西学生の6回を大きく引き離している。大学別では法政大(東京六大学)の8回が1位で、2位は駒澤大学(東都大学)の6回、3位が明治大学と早稲田大学(ともに東京六大学)の5回である。高校野球以上に伝統校が結果を残していることがよく分かるだろう。しかしここ数年はその勢力図に大きな変化が生じている。関東近郊を含めた地方リーグの大学の台頭が目覚ましいのだ。過去3年間でベスト4以上に進出したチームのうち、東京六大学と東都大学の代表チームは一昨年優勝した早稲田大だけである。いかに地方と中央の差がなくなっているかがよく分かるだろう。

 ただ今大会の出場校を見ると、戦力的に最も充実しているのは東洋大(東都大学)であることは間違いない。俊足巧打の選手と強打者がバランスよく並び、リーグ戦10試合で63得点を叩き出した強力打線は破壊力十分。ノーシードのため優勝するには5試合を勝ち抜く必要があり、飯田に次ぐ投手陣の出来がカギとなりそうだ。

 対抗に推したいのは4年前の優勝校で過去2大会もベスト4に名を連ねている上武大(関甲新学生)だ。島田以外にもサードの鳥巣誉議(4年)、ショートの小豆澤誠(4年)、キャッチャーの吉田高彰(3年)と経験豊富な野手の実力者が揃っている。宮川という抑えの切り札がいるだけに大型右腕の西村雅暉(2年)など先発陣の出来が重要になるだろう。

 この2チームに51年ぶりの出場たる立教大(東京六大学)や投打のバランスの良い九州産業大(福岡六大学)などが絡む展開が予想されるが、例年以上に各チームの力の差は小さいように感じる。昨年の中京学院大のように、予想もしなかったチームが一気に頂点に駆け上ることも十分に考えられるだろう。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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