「部下が服従すると機嫌が良くなって、仕事あとに部下を連れて自分の顔が利くちょっといい店に連れていき、グルメ漫画で得た程度の薄いうんちくと自慢話をえんえんと語ります。これは彼らの自己承認欲求が強いせいで、それを満たすための行為です。先日聞いた話では土日もクラッシャー上司の趣味の釣りにつきあわされることもあるそうです」(松崎氏)

 モンスターはなぜ生まれるのか? 例えば松崎氏の著書に登場する、X氏というクラッシャー上司は、エリート中のエリートだが、部下が失敗でもしようものなら自室で2時間は説教、反論すれば論破しコテンパン。そのくせ部下の手柄は自分のものにし、うつで休職すれば「うつなんてないんだよ!」と吐き捨てる気分屋。最悪最強のクラッシャー上司だ。松崎氏はこの上司の生い立ちをヒアリングしている。

 X氏は、幼少時から友人と遊ぶことなく勉強に励み、成績を上げたときでも父親から褒められたことは一度もなく、それどころか、厳しい言葉が返ってきたという。これでは部下を褒めることはできない。

 そして、大学入試で本来の志望校に入れなかった挫折感を虚勢で補い、自分の中で下がってしまった自己評価をモンスター行為で補っていたのだ。X氏は結局、途中で面談に応じることをやめてしまったという。

 モンスター上司のなかにはX氏のように未成熟な自己愛の持ち主も多いようだ。生い立ちに同情する部分はあるが、攻撃される方はたまらない。

 では、どうすれば彼らの攻撃をかわせるのだろうか?

「中小企業なら、嫌ならばやめてしまうケースがいちばん多いですね。ところが大企業だと“せっかく入社できたのだし”と頑張ってしまうので問題です」

 大企業にはバブル時期に膨大な利益を上げた実績があり、終身雇用も根強く残っている。そこにクラッシャー上司が巣くう隙ができてしまうという。

 松崎氏は終身雇用型の日本の企業のあり方も問題だと指摘。欧米のようなジョブ型社会構造になれば、職場を変えることでクラッシャー上司から逃れることも容易になると説いているが、それにはまだ時間がかかりそうだ。

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