韓国ではリーグ戦が始まった1982年に日本で長くプレーした白仁天(MBC青龍)が.412をマークしており、これが唯一の4割超えとなっている。それ以降では『韓国のイチロー』と呼ばれ、中日でもプレーした李鍾範(ヘテ)が1994年にマークした.393が最高記録だ。

 そんな中、昨年初の4割打者が誕生したのが台湾だ。プロ入りわずか2年目の王柏融(Lamigo)が台湾球界初のシーズン200安打とともに打率.414をマーク。また蒋智賢(中信兄弟)も.402、林泓育(Lamigo)も.400と三人もの4割打者が一気に誕生している。王はWBCの壮行3試合で侍ジャパンの投手陣から一発を含む三3安打をマークしており、国内球団も調査に乗り出していると言われている。近い将来日本でのプレーが見られる可能性も十分にあるだろう。

 改めて近藤について触れたいが、昨年は膝の故障もあって不振に陥ったものの、一昨年はリーグ3位の高打率をマークしておりバッティングの技術的には非常に高いものを持っている。持ち味は広角に強い打球を放つことができる点で、安打方向に大きな偏りが見られない。捕手登録だが高校時代はもともとショートだったということもあって脚力も申し分なく、内野安打を稼ぐことができるのも大きな武器である。そして今年特に目立つのが四球の多さだ。一昨年は504打席で59四球だったのが、今年は186打席で既に49四球を選んでおりこれは両リーグ最多の数字である。チームで3割を超える打率をマークしているのが近藤以外に一人もいないということもあり、日増しにマークは厳しくなっているが、無駄なボール球に手を出していないというのは大きな成長と言えるだろう。またフルカウントとなった打席が57回もあり、そのうち30打席が四球となっている。ただ選んでいるというより四球を奪いとっているという表現の方が当てはまりそうだ。

 一方で不安要素は左投手への対応とコンディションの問題だ。対右投手の打率が.436なのに対し、対左投手は.304とだいぶ差がある。一昨年はほぼ同じ打率だったが、膝を痛めた昨年は対左投手の打率は.143と大きく落ち込んでいる。角度のある外に逃げるボールに対応するためにも、下半身のコンディションを落とさないことが重要になりそうだ。

 打率4割をキープするということは5打数2安打のペースで打ち続けるということであり、過去の記録を見ても相当な難易度の高さであることは間違いない。それでも今の近藤のバッティングを見ていると、大きく数字を落とさない雰囲気も漂っている。今後さらに注目が高まっていくことが予想されるが、今のスタイルを最後まで貫くことができれば日本プロ野球史上初となる4割打者の誕生も決して夢ではないだろう。(文・西尾典文)

(※成績は5月28日終了時点。所属は当時)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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