日本ハムの近藤健介(c)朝日新聞社
日本ハムの近藤健介(c)朝日新聞社

 4月には12年ぶりとなる10連敗を喫するなど、開幕から低迷している昨年の王者日本ハム。大黒柱である大谷翔平を怪我で欠き、主砲の中田翔も不振に陥るなど苦しい戦いが続いているが、そんなチームにあって驚異的な打撃で一人奮闘しているのが6年目の近藤健介だ。3月・4月の25試合で.416の成績を残すと、5月もここまで4割を超える高打率をマークし、2位の内川聖一(ソフトバンク)に7分大差をつけて首位打者を独走している。残り試合はまだ100試合弱あるものの、夢の4割打者誕生の期待も高まっている。そこで今回は打率に関するあらゆる記録、そして近藤が4割打者になる可能性について考えてみたいと思う。

 日本のプロ野球のペナントレースが始まったのは1936年だが、これまで打率4割を達成した選手は一人も誕生していない。シーズンの歴代最高打率は1986年にバース(阪神)がマークした.389で、この記録も30年間破られていない。パ・リーグでは2000年にイチロー(オリックス)がマークした.387が最高記録であり、4割はおろか3割9分に到達した選手すらこれまで一人もいないのである。打率4割を維持した試合数としては1989年にクロマティ(巨人)が記録した開幕から97試合というのが最高である。ちなみにこの時点でクロマティは既にシーズンの規定打席に到達しており、残り試合を全て欠場すれば初の4割打者達成となっていたが、チームが優勝争いを演じていたこともあってその後も出場を続け、首位打者こそ獲得したものの最終的には.378に終わっている。21世紀に入ってからの記録では08年に内川(当時横浜)が記録した.378が最高であり、これは右打者の歴代最高打率でもある。そしてこれ以降3割7分を超える打者は8年間誕生していない。

 海外に目を移すとメジャー・リーグでは20世紀以降8人の打者が打率4割をマークしており、最後に達成されたのはテッド・ウィリアムズ(レッドソックス)の1941年である。それ以降で最も4割に近づいたのはトニー・グウィン(パドレス)が1994年にマークした.394。ちなみにこの年は選手会のストライキによって8月にシーズンが打ち切られており、もしこれがなければ53年ぶりの大記録が誕生していた可能性もあっただろう。21世紀の記録では04年にシーズン最多安打記録を達成したイチロー(当時マリナーズ)がマークした.372が最高で、それ以降3割7分を超える打者は出てきていない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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