タイで日本人が起こした代理母出産をめぐる事件がおよぼした影響

世界の産声に耳を澄ます
石井光太著
978-4022514660
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 少子化が問題視される日本。平均初産年齢は30歳を超え、「妊活」という言葉も定着した感がある。では、世界の出産事情はいま、どうなっているのか?

 自身が父親になったことをきっかけに、2013年から主に途上国のお産と育児についてルポすることを決めたノンフィクション作家の石井光太さん。民主化して間もないミャンマーの森に暮らす原住民の村を皮切りに、中米のグアテマラ、ホンジュラス、タイ、フィリピン、紛争地であるヨルダン、シリアを経てアフリカのタンザニア、スワジランド、そしてスリランカをまわりまとめた『世界の産声に耳を澄ます』には、難民、HIV患者、遺伝疾患、ストリートチルドレンなど、まだまだ知られざる世界の出産事情が描かれている。

 たとえば、多くの人が一度は観光で訪れたことがあるであろうタイ。2014年夏に、このタイで起きた代理母出産をめぐる二つの事件を、どれほどの人が覚えているだろうか。

 ひとつは、オーストラリア人夫妻が、代理母出産で生まれた双子の男女の赤ん坊のうち、障害が見つかった男児を置き去りにした事件。もうひとつは、東証一部上場企業の光通信の創業者の息子が少なくとも16人の赤ん坊を代理母に出産させていたことが判明した事件。どちらも、生殖医療にまつわる生命倫理が問われた事件だった。

 事件発覚後の12月に、タイを訪れた石井さんは、タイ在住の日本人の医療コーディネーターに事件がもたらした影響を聞く。コーディネーターは、法規制が行われることを見越し、ネパールやグルジアへ視察に足を運んでいることを明かす。日本では、法律で禁止されている代理母出産。だが、世界には法規制のない国がまだいくつも存在する。その法の網の目をかいくぐり、希望する人々を現地の医療施設と結びつける医療コーディネーター業。かなり高いリスクを背負う仕事のように思えるが、その報酬は10パーセントと定められており、タイ国内では体外受精と出産で250万円ほどが医療費として必要だというが、コーディネーターにはそのうちの10パーセント、つまり25万円しか支払われないのだという。取材を受けたコーディネーターは言う。

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