そして、これらの“強くなった”要因の根本には、その時代に合った優秀な指揮官の存在が挙げられる。これまで田尾安志が1年、野村克也が4年、ブラウンが1年、星野仙一が4年チームを率い、大久保博元の1年を挟んで、今年で梨田昌孝体制2年目を迎えている。結果が出なければスパッと辞めさせる素早い決断とともに、野村、星野の両監督の果たした役割は大きく、その遺産は今もチームに強く残っている。

 作家・司馬遼太郎氏によれば、歴史の変革期には、その時期ごとに「思想家」、「革命家」、「技術家」の人物像が登場するという。幕末で言えば、最初に思想家としての吉田松陰が世に現れ、その後に高杉晋作、坂本龍馬らの革命家が躍動して大きく時代を変えた。ただ、その後の力強い近代日本を作り上げたのは、伊藤博文などの「技術家」に当たる政治家だった。

 野村監督の「考える野球」は正捕手の嶋基宏を中心に選手たちに根付き、震災復興のうねりの中で田中将大という英雄を生み出して日本一に輝いた13年の戦いは、まさに“革命的”であった。そして、その経験を携えた中、確かな戦力補強と選手起用でチーム力を整えたのが梨田監督である。この物語は成就するのか。まだ結末は誰も知らないが、開幕からの2カ月で大きな予感が生まれていることは、確かである。