決勝点を決めた堂安律(左)と喜ぶ久保建英(右)(撮影・六川則夫)
決勝点を決めた堂安律(左)と喜ぶ久保建英(右)(撮影・六川則夫)

 5月21日、韓国・水原で行われたU-20W杯の初戦、日本対南アフリカ戦の後半14分、15歳のFW久保建英が交代出場で初デビューを果たした。

 これまでU-20W杯の日本における最年少記録は1979年東京大会の風間八宏(現・名古屋G監督)と名取篤、2005年大会の森本貴幸(現・川崎F)の17歳だ。久保はそれを2歳も更新した。

 試合は南アが前半7分にグラント・マージェマンのシュートを富安健洋が自陣に蹴り込んで先制する(記録はマージェマンのゴール)。マージェマンは限りなくオフサイドに近かったが、アシスタントレフェリーはフラッグを上げなかった。主審はVTR判定の結果を聞いてから南アのゴールを認めた。

 これに対し日本は、48分にFW岩崎悠人の左クロスをFW小川航基が押し込んで同点に追いつく。しかし、この時もアシスタントレフェリーはボールがゴールラインを割る前にGKがかき出したとしてゴールを認めなかった。こちらもVTR判定の結果、主審はゴールと判定する。ここまでは何とも後味の悪い試合展開だった。

 そんな試合で15歳の久保が魅せた。

 交代直後のファーストタッチ、右足でボールを止めると左足で小川に絶妙なスルーパスを通してGKと1対1の決定機を演出。小川のシュートはGKに弾かれたものの、久保の登場により試合の流れは変わった。背筋をピンと伸ばしたドリブルは、見ていて美しいだけでなく、視野の確保にも役立っている。

 それが72分のMF堂安律の決勝点に結びついた。左サイドで堂安からタテパスを受けるとドリブルで深く侵入する。ファーサイドには小川が走り込んでいたため、ファーを見ながら久保はDF陣の裏をかいてニアサイドへマイナスのクロスを送った。レフティーからの打ちやすいクロスを同じレフティーの堂安はきっちりと逆サイドに突き刺して、決勝点となった。

 当の久保は、逆転勝利につながる決勝点のアシストについて「使ってくれたら、期待に応えないといけないかなと思いました。チームが結果を残すことが大事ですし、自分が結果を残すことも大事だと思っていますので、今日は両方出せて良かったと思います」と、大仕事をやってのけた15歳とは思えない冷静さで話した。

 今大会のレギュレーションは、各グループ上位2チームの計12位チームと、成績上位の3位4チームがラウンド16に進む。その意味でも、初戦で勝ち点3を獲得したことは、グループリーグ突破に大きく前進したといえる。「やるからには高いところを目指したい」という久保にとって、次に期待されるのはもちろんゴールに他ならない。(現地取材=サッカージャーナリスト・六川亨)