セ・リーグで中日に次ぐ5位に沈むヤクルトは慢性的な選手層の薄さが課題だ。投手陣で気になるのは左の先発。左投手で唯一ローテーションに入っている石川雅規も4勝はマークしているものの防御率は5点台弱と安定感を欠いている。そこで獲得を目指したいのが山田大樹(ソフトバンク)だ。昨年3年ぶりの一軍勝利をマークし、今年も二軍ではローテーションの中心として機能している。若手の有望株が多いソフトバンク投手陣では個性を発揮できていないが、他球団なら一軍で投げる力は十分に持っているだろう。野手では川端慎吾と畠山和洋が不在のサード、ファーストが手薄な印象だ。ここに当てはまりそうなのは左でパンチ力のある枡田慎太郎(楽天)。楽天では同じタイプの選手が多く、今年は出場機会に恵まれていないが、二軍では3割を超える高打率をマークしている。スタメンでは雄平以外に左で長打力のある選手がいないだけに、ヤクルトの補強ポイントにぴったり当てはまるだろう。

 シーズン中のトレードは15年以降わずかに4件しかなく、その年に一軍の戦力となったのは矢野謙次(巨人日本ハム)くらいである。しかし昨年オフに移籍した石川慎吾(日本ハム→巨人)と大田泰示(巨人→日本ハム)はチームの起爆剤的存在となっており、トレードの有効性が示された例と言えるだろう。今回は下位に沈む球団の補強ポイントから選手をピックアップしたが、好調なチームで出番に恵まれない選手もまだまだいるはずである。積極的にトレードを活用する球団が出てくることで、そのような選手が生き返るケースもあるだろう。

 トレード期間の終了まであと約2カ月。球団にとっても選手にとってもプラスになるトレードが一件でも多く成立することを期待したい。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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