中村獅童 (C)朝日新聞社
中村獅童 (C)朝日新聞社

 初期の肺腺がんを患っていることを公表した歌舞伎俳優の中村獅童(44)。肺がんはがんの中で最も死亡者数が多く、早期発見が難しいとされている。しかし近年、新薬の登場で治療環境は大きく変わろうとしている。『新「名医」の最新治療2017』(朝日新聞出版)では、その症状について専門医に聞いた。

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 肺がんの推定患者数は、全国で年間約11万人。年間約7万人が死亡している。40代後半から増え始め、高齢になるほど発症する率は高くなる。

 肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんとに大別される。後者は全体の85%を占め、そのうち6割が「肺腺がん」、3~4割が「扁平上皮がん」、残りが「大細胞がん」だ。多くのタイプがあり、肺の中でも発生しやすい部位や進行速度などはそれぞれ異なる。

 治療は、外科切除ができるか否かで大きく変わる。肺がんは無症状で進行して転移もしやすいため、手術で根治が目指せるという状態で見つかるのは、わずか2割程度。約8割は手術が不可能な状態で発見される。

 非小細胞肺がんで最も病期が進んだIV期になると、5年生存率はわずか5%だ。だが、薬の目覚ましい進歩で生存期間が延びるなど、治療は進化している。

 和歌山県在住の香川和彦さん(仮名・66歳)は、2012年に県内の病院で健康診断を受けた。胸部X線検査で異常な影を指摘され、さらに詳しく検査した結果、扁平上皮がんと判明した。病期はIIIA期まで進んでおり、開胸手術でがんのある右下葉を切除した。

 ところが1年後に再発。肺に1~3cmのがんが6個見つかり、最も進行したIV期になっていた。IV期の主な治療は薬物療法だ。香川さんは、2種類の抗がん剤を組み合わせた併用療法をおこない、通常の生活を送っていたが、さらに1年後に再発。別の種類の抗がん剤による治療でも数カ月後に再発してしまう。

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