「あの時君は若かった」をアルフィーや藤井フミヤさんらと一緒に歌う堺正章さん(中央)=2日午後、東京都港区、代表撮影 (c)朝日新聞社
「あの時君は若かった」をアルフィーや藤井フミヤさんらと一緒に歌う堺正章さん(中央)=2日午後、東京都港区、代表撮影 (c)朝日新聞社
約6000本の花で巨大なギター画が描かれた祭壇(撮影・伊ケ崎忍)
約6000本の花で巨大なギター画が描かれた祭壇(撮影・伊ケ崎忍)
音楽葬に参加したユーミン(松任谷由実)(撮影・伊ケ崎忍)
音楽葬に参加したユーミン(松任谷由実)(撮影・伊ケ崎忍)
音楽葬に参加した藤井フミヤ(撮影・伊ケ崎忍)
音楽葬に参加した藤井フミヤ(撮影・伊ケ崎忍)
20年ぶりにオリジナルメンバーがそろったスパイダース(撮影・伊ケ崎忍)
20年ぶりにオリジナルメンバーがそろったスパイダース(撮影・伊ケ崎忍)

 膵臓がんで3月1日、この世を去ったムッシュかまやつさん(本名・釜萢弘・享年78)の音楽葬が5月2日、東京都内のホテルで行われた。

 かまやつさんが1963年から70年に在籍したGS(グループサウンズ)のバンド「ザ・スパイダース」、従妹にあたり故人の最後の3カ月をケアした森山良子らが、ステージでかまやつさんとの思い出の曲を歌い継いだ。

 中でも涙腺が一番、決壊したのは、ユーミン松任谷由実)だった。「中央フリーウェイ」を歌い終え、ムッシュかまやつさんの遺影を見上げて感極まり、「(かまやつさんが)いる! ここにいる!」。

 故人の気配を感じていたのだろうか。

 ユーミンのデビューシングル「返事はいらない」のプロデュースはかまやつさん。2人は50年にもわかり親交を温めてきた。この日に歌った「中央フリーウェイ」もかまやつさんに贈った曲。

 1976年、TBSで「セブンスター・ショー」という音楽番組が放送された。一週間に1組ずつアーティストが登場するシリーズで吉田拓郎や沢田研二と並び、「ムッシュ&ユーミン」の回が企画され、番組内でユーミンがかまやつさんにプレゼントしたのが「中央フリーウェイ」。一方、かまやつさんがユーミンに贈ったのは「楽しいバス旅行」という曲だった。

 ♪楽しいバス旅行、ピピッピー……。そちらは結局、未完成のまま収録日を迎えたという。

 かまやつさんは生前、千代田区紀尾井町のフレンチ系のカフェレストランの常連で、毎日のようにワインを飲んでいた。

 その店でユーミンとのエピソードを話してくれたことがある。なんと、松任谷夫妻の新婚旅行にも付いていったそうだ。

「彼女のデビュー曲のプロデューサーは僕。そして、夫の松任谷(正隆)さんは当時拓郎のツアーのバンドマスター。だから、拓郎と話して、2人に初夜を迎えさせない! と決めてね。新婚旅行について行って、朝までドンチャン騒ぎをしたんだ」
 
 初夜を迎えさせない、という目的をしっかり果たした。

 お別れ会の会場には次々とミュージシャンや俳優が訪れた。献花を終えたギタリストのCharにかまやつさんとの思いを訊くと、こらえきれずに瞳を潤ませた。

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