それでいて、多感な時期を異国の環境ですごし、常に上のカテゴリーの選手たちと接してきた久保は、歳上の選手に物怖じしないメンタリティも持っているようだ。U-20代表のキャプテンで、かつてU-19アジア選手権を飛び級で経験したこともある坂井大将は、彼の技術や戦術眼の高さだけでなく、チームの年長者である坂井より5歳下の久保が、チームにすんなりと馴染んだことに驚かされたという。それにより、合流した当初は話題の“久保くん”として見ていたU-20のチームメートの扱いもすぐ“タケフサ”に変わったわけだ。

 もちろん、トップリーグで活躍していくための課題は、目に見える範囲でも少なくない。成長段階にあるフィジカル面は言うまでもないが、それにも増して周りとのイメージの共有という部分で、大きなズレが生じることが多い。無得点に終わった4月30日の長野パルセイロ戦でも、何度かシュートチャンスはあったが、久保の動き出しと周りのパスが合わずに、チャンスがついえてしまったシーンが目に付いた。そこに関しては久保が合わせるのか、周りが合わせるのか、プレーとコミュニケーションを重ねることで克服していける部分でもあるだろう。

 久保は高い技術レベルやビジョンを持っていると言っても、まだプロとして完成された選手ではなく、ここから壁に当たるリスクもある。ただ、持っている才能に溺れることなく高いレベルの環境で経験を重ね、ハードルをいくつも乗り越えていった先に、日本人選手として、かつてないレベルの到達点が待っているのかもしれない。(文・河治良幸)