これまでも17歳でデビューした稲本潤一やJ1の最年少出場記録を持つ森本貴幸など、中高生のうちにJリーグデビューを果たし、年齢を感じさせないプレーで見る者を驚かせた選手は存在した。だが、大半の選手は肉体的に早熟で、大人に比べても体格的な不利が少ないことが活躍の要因だった。もちろん、2人とも高い技術を持っていたが、稲本はコンタクトプレーでボールを奪うことができた。森本もまた、非凡なスピードと屈強なDFにも当たり負けしない体格を当時から持っていた。

 こうした事例に比べると、現在A代表の10番を背負う香川真司は、久保に通じる部分がある。街クラブの「FCみやぎバルセロナ」でプレーしていた香川は、17歳でC大阪に加入。下部組織の選手をのぞけば高校年代で初めてプロ契約を結んだ選手で、2007年にはU-20W杯に飛び級で出場した。その香川も当時から正確な技術を持ち、プレー選択の幅が非常に広かった。爆発的なスピードがあるわけではないが敏捷性が高く、周りの選手より早くスペースに入り込んでボールを扱えるという部分は久保とも似通っている。

 ただ、より近いプレーを表現していたのは小野伸二かもしれない。Jリーグ13クラブからのオファーを受けて清水商業高から18歳で浦和レッズに入団した小野。いきなりレギュラーを掴み、その年に日本代表としてフランスW杯に出場した。驚かされたのは絶対的とも言える技術の高さで、イージーなミスがほとんどないことに加え、相手ディフェンスを逆手に取るようなゴールに直結するプレーを披露した。当時の小野は体格面で、現在の久保より優位だったが、攻撃面でコンタクトを必要とする場面が少なかった。おそらく高校生でプロに挑戦していたとしても、ある程度通用したはずだ。

 現在15歳で身体的にも成長過程にある久保を、当時の香川や小野と単純に比較することはできない。しかし、卓越した技術を試合の中で、効果的に発揮するという実行力に関してはかなり高いレベルにあると見て間違いない。そして、何より感じるのが選手として、少しでも高いレベルに到達したいという向上心である。ゴールを決めた試合でも、発言は自分のプレーに厳しく分析的だ。これまでも周りの基準に左右されず、自己分析とトレーニングでのフィードバックを積み重ねてきたのだろう。

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