――神話の神と現代生活を関係づける作業は楽しかったのですか?

 興味をそそられる素材は尽きなかった。課題の一つとして、アメリカの歴史を語るという事があった。リサーチはしたが触れなかったテーマもある。本が長くなりすぎるからだ。短編だけでも5000字とかになって、まとめると2万字以上になってしまって。

 その中の一つに、例えば第二次世界大戦中の日本人捕虜収容所を背景にした狐の話などもあったんだよ。狐が化ける話で、収容所の子供たちが出てくる。「アメリカン・ゴッズ」に挿入することはできなかったが、いつかは小説にしたいと思っているんだ。

――テーマについてですが、北欧の伝説と現代アメリカ文化を結びつけるという壮大な案をてがけようと思ったきっかけは? インスピレーションはどこから?

 ある日レキャビックに行った時のことだ。博物館情景模型を見たんだ。レイフ・アレクソンというバイキングの旅を模ったもので。アイスランドからグリーンランドを抜けてアメリカへ渡った彼の足取りを追った模型だよ。

 それを見て、ひょっとしたらレイフはアメリカまで神々を連れて行っただろうか、と思ったんだよ。そしてレイフがアメリカを去ったとき、神々はアメリカに居残ったのだろうか、と。あの瞬間だね、浮遊していた案が小説の案として結晶化したのは。

(取材・文/高野裕子)