現在2勝を挙げているフェラーリのベッテル(写真:Getty Images)
現在2勝を挙げているフェラーリのベッテル(写真:Getty Images)

 2017年のF1第4戦は、ロシアGPだ。舞台となるソチ・オートドロームは、2014年に開催された冬季五輪会場となったオリンピックパーク内に造られた特設コースだ。3年前の冬季五輪では、フィギュアスケート羽生結弦が日本男子初の金メダルを獲得し、先日現役引退を発表した浅田真央にとって最後の五輪となったソチ。日本人にとって、思い出深いこの地に、覚悟を持って臨むのが、ホンダだ。

 2週間前に行われた第3戦バーレーンGPで、ホンダ製のパワーユニットは、 MGU-Hと呼ばれる熱エネルギー回生装置にトラブルが多発。3日間で4基もの MGU-Hが壊れ、1チーム2台で出場するレースで1台しかスタートできないという前代未聞の失態をさらけ出してしまった。

 事態を深刻に受け止めたホンダは、その直後に同地で行われたテストで、「暫定的な対応策を施し、解決へ向けた方向性を確認できた」(中村聡チーフエンジニア)というホンダは、最終日に81周を走行。この実績をもとに、ホンダは改良型の MGU-HをロシアGPに投入することになるだろう。

 すでに3基の MGU-Hにトラブルを発生させているバンドーンはこれが4基目となり、年間4基という今季の規定上限に達する。もし、ロシアGPで再び、トラブルを再発させれば、5基目の使用からはグリッド降格ペナルティが科せられる。ホンダにとって、この改良型 MGU-Hの出来は、ロシアGPの成績だけでなく今シーズン残りの戦いを左右する非常に重要な鍵となる。

 タイトル争いも要注目だ。現在、ドライバーズ選手権でトップを走るのは、2勝を挙げているフェラーリのベッテル。これをメルセデスAMGのハミルトンが7点差で追っている。現在のF1は優勝すると25点獲得できるので、この差はまだ僅差だ。だが、F1はヨーロッパラウンドに入る前の序盤戦でトップに立っていたドライバーが、そのままシーズンを制してきたことが多い。そういった意味では、このロシアGPは今シーズン最初の天王山となるかもしれない。

 もうひとり注目すべきドライバーがある。前戦バーレーンGPで初ポールポジションを獲得したボッタスだ。優勝経験がないドライバーが前年のチャンピオンチームに移籍して初優勝を遂げたというケースは、最近では3例しかない。93年のデーモン・ヒル、2000年のルーベンス・バリチェロ、そして2006年のフェリペ・マッサだ。もし、ボッタスがロシアGPで初優勝を挙げると、彼らの記録を破るだけでなく、タイトル争いにも加わることになるだけに目が離せない。