このまま地球温暖化が進めば、人類の未来は危うい。温暖化を食い止めることができるのは、人類だけ。私たちができることって何だろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員の石井徹先生の解説を紹介しよう。

石井徹先生/朝日新聞編集委員。地球温暖化や自然エネルギーを中心に、国内外の環境問題について取材・執筆を行う(撮影/写真部長谷川唯)
石井徹先生/朝日新聞編集委員。地球温暖化や自然エネルギーを中心に、国内外の環境問題について取材・執筆を行う(撮影/写真部長谷川唯)

■豊かな暮らしと人口増加

 世界の人口は現在、70億人を突破している。約200年前の1800年ごろには約10億人だった。

 その少し前、18世紀後半のイギリスでは産業革命が始まった。それまで、機械や乗り物の動力は、人や、家畜などの動物か、木や水、風などの自然のエネルギーだった。だが、産業革命を機に石炭など地中の化石燃料を、農工業や交通に利用しはじめた。強大なエネルギーを手に入れた人々の暮らしは豊かになり、人口も爆発的に増加した。

 ただ、困ったことが起きた。化石燃料を燃やすときに出る二酸化炭素(CO2)が、必要以上に地球を熱くしている疑いが出てきたのだ。

 地球の温暖化が進めば、雨の降り方や風の吹き方などが変わって、洪水や干ばつ、猛烈な台風などの原因になる。こうした現象は「気候変動」とも呼ばれる。そして、私たちの食べ物や健康、安全にも悪影響を与え、紛争の原因になることもある。

■世界でルールづくりを

 温暖化を食い止めるために、世界各国の首脳は1992年、ブラジルのリオデジャネイロで行われた「地球サミット」で「気候変動枠組み条約」に署名した。でも努力目標だったので、守る国は少なかった。

 このままではいけないと、97年に京都で開かれた会議(COP3)で決めたのが「京都議定書」だ。先進国にはCO2などの温室効果ガス排出を減らす義務が負わされた。

 ところがその後、発展途上国の経済成長が急激に進み、エネルギー使用と温室効果ガス排出が増大して、先進国を上回るようになった。このため、196の国と地域が2015年の会議(COP21)で決めたのが「パリ協定」だ。

 各国が国内に持ち帰り、急いで同意手続きを進めたため、協定は昨年11月、発効した。20年の本格的なスタートに向けて、細かいしくみやルールをつくっていく。

【キーワード:産業革命】
蒸気機関の発達などをきっかけに工場が機械化され、産業や社会に大きな変化をもたらした技術革新。

【キーワード:化石燃料】
石炭、石油、天然ガスなど、地下にある燃料資源。大昔の動植物の化石からできていて、燃やすとCO2が発生する。

【キーワード:温室効果ガス】
大気中にある地球を暖める性質を持つ気体(ガス)。二酸化炭素(CO2)などが代表的で、メタン、一酸化二窒素、フロンなどがある。

※月刊ジュニアエラ 2017年5月号より

ジュニアエラ 2017年 05 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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