安定感が増し、プレミアリーグでも評価を高めつつあるサウサンプトン・吉田麻也(写真:Getty Images)
安定感が増し、プレミアリーグでも評価を高めつつあるサウサンプトン・吉田麻也(写真:Getty Images)

 英国のサッカー番組のなかで、元イングランド代表MFのスティーブン・ジェラードが「センターバックの重要性」について語ったことがあった。

 ジェラードが「ワールドクラスのセンターバック」と形容したのは、マンチェスター・Cのヴァンサン・コンパニー(ベルギー代表)やユベントスのレオナルド・ボヌッチ(イタリア代表)、バイエルン・ミュンヘンのマッツ・フンメルス(ドイツ代表)、サウサンプトンのフィルジル・ファン・ダイク(オランダ代表)といった面々。プレー映像として流れたのは、力強いタックルで敵の突破をブロックしたり、素早いカバーリングで攻撃を潰したりする場面で、イングランドにおける「理想的なセンターバック像」が鮮明に描かれていた。

 ジェラードいわく、「彼らは堅いディフェンスを誇り、強固なリーダーシップで最終ラインを束ねている。石の壁となってゴール前に立ちはだかるワールドクラスのセンターバックだ」。解説の中で、例えば後方部からの縦パスで好機を演出するシーンなどは皆無で、「パワフル」「盤石」「素早いカバーリング」「リーダーシップ」といった言葉が並んだ。

 1対1の場面で敵の突破を許さない、あるいは相手にスペースを与えない。空中戦で競り勝つことも必須で、とにかく与えられた持ち場で敵を完璧にはね返していくことが、センターバックに課された最大のタスクとなる。もちろん、これはセンターバックの基本的なプレーになるのだが、この点を徹底するのがまさしくイングランド流なのである。

 プレミアリーグ在籍5季目を迎えた吉田麻也も、この点を踏まえてピッチに立っている。”繋げるセンターバック”が吉田のアピールポイントだが、「シンプルにプレーすること」(吉田)がプレミアで生き抜くためのキーワードになるという。

 吉田自身は以下のように分析している。

「イングランドと日本での評価は基準が違っている。イングランドは『競り勝つ、止める、ブロックする』というクラシックなディフェンスがまず評価される。逆に(ビルドアップ時に敵の)間(あいだ)にボールを通したからといって、さほど評価されない」

 さらに、2012年まで在籍したオランダのリーグとの違いにも触れて、こう続けた。

「何にチャレンジしてはいけないか、どういうミスをしたらダメなのか。それは、ミスを繰り返して理解したつもりなんで。その土地にあったサッカーをしなければならないし、ここで評価される選手になるためには、そこを意識しなくてはいけない。(オランダとも)違いますね。イングランドの方がよりクラシカルな守備が求められる。基本的にオランダは後ろからビルドアップするのが伝統なので、それもできるとさらに評価が上がる」

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