代表的な漢方薬の処方(『心とからだを整える 本格漢方2017』より)
代表的な漢方薬の処方(『心とからだを整える 本格漢方2017』より)
石橋総合病院院長・市村恵一(いちむら・けいいち)/東京大学医学部卒。1999年、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、2014年から同大学名誉教授。耳鼻咽喉科学会専門医、日本小児耳鼻咽喉科学会(前理事長、顧問)など
石橋総合病院院長・市村恵一(いちむら・けいいち)/東京大学医学部卒。1999年、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、2014年から同大学名誉教授。耳鼻咽喉科学会専門医、日本小児耳鼻咽喉科学会(前理事長、顧問)など

 毎年この時期だけ海外に逃亡――。いまいましい「花粉症」のせいで、そう思っている人も多いはず。週刊朝日MOOK『心とからだを整える 本格漢方2017』では、花粉症に効く漢方に注目。西洋薬と漢方薬に精通している耳鼻科の先生に話を聞いた。

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 歓迎されない風物詩、花粉症。つらい症状で、子どもからおとなまでを悩ませる。

 花粉症は「アレルギー性鼻炎」のひとつで、アレルギーの原因が花粉の場合をそう呼んでいる。花粉が鼻に入ればくしゃみや鼻水で追い出す、目に入れば涙で洗い流すといった、本来はからだに入ってきた異物を排除しようとする、自然な働きだ。

 ただ、これを繰り返すうちに、粘膜や血管の周りに多く存在している「マスト細胞」から、ヒスタミンやロイコトリエンが出るようになる。脳に、さらに「くしゃみをしろ、鼻水を出せ」と指示をする物質だ。血管には、管を拡張するだけでなく、水(血液の成分)を漏らし、むくみで鼻を詰まらせるという働きかけもする。同じく、花粉がこれ以上入ってこないようにする防御反応だが、何しろ過剰でつらい状態になるのが花粉症、というわけだ。

「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」を3大症状といい、ほかに目のかゆみや涙、肌がカサカサになるといった症状もみられる。

■漢方薬と西洋薬のあわせ技も

「鼻だけ、あるいは目だけしか症状がないという人もいますが、必ずほかにも症状があるはずです。程度問題で自覚がないだけ。同じアレルギーでも重症度は人によって違うので、処方も変わります」

 そう話すのは、石橋総合病院院長の市村恵一先生。医師に診療方針を提案する「ガイドライン」を作っている先生の一人でもある。西洋医として患者さんを診つつ、漢方薬処方もしている。

「花粉症に処方する漢方薬は、症状に対して処方する『急性期』と、体質を改善する『寛解期』にわけて考えます。急性期は症状が強くなってからの治療だと薬も強くなってしまうので、症状が出たらすぐに治療を始める初期療法をすすめています。ここで漢方薬を使うと効果が高いですよ。西洋薬とあわせることで選択肢が増え、さらなる効果も期待できます」

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